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妊娠・出産への影響大…「ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症」とは?

2022年3月31日 12:31

子宮頸がんワクチンは、ヒトパピローマウイルス(HPV)に対するワクチンで、2013年から定期接種となりました。

 

ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症は、子宮頸がんの原因として知られていますが、その他、中咽頭がん、肛門がん、尖圭コンジローマ等も男性も罹患する病気の原因にもなりえます。また、男性の発症の可能性もあるので、子宮頸がんワクチンの接種が推奨されているのです。

 

ワクチンとの因果関係が否定できない副反応の報告があったため、厚生労働省は一時、積極的接種を勧奨しない方針となっていましたが、その結果として、接種率は1%を下回りました。

 

その後、HPVワクチンの安全性に関して特別な懸念がないことが確認され、子宮頸がん予防などのHPVワクチン接種のメリットが、副反応のリスクと比べて上回っていると判断し、20224月から接種対象者に積極的勧奨が再開されることになりました。

 

本記事では、「ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症」と、子宮頸がんワクチンについて、医師が詳しく解説していきます。

ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症とは?

ヒトパピローマウイルス(HPV)には約200種類のタイプの異なる遺伝子があります。この中の一部でとくにHPV1618型感染による子宮頸がんの発症が懸念されています。子宮頸がん症例の解析から。その57割がHPV1618型による感染が原因です。

 

HPVの感染は、性交経験がある女性であれば可能性があります。そのほとんどはウイルスが免疫機構で自然排泄されますが、頻度は低いものの子宮頸がん発症に至ることがあります。稀です。HPVの持続感染により、子宮頸部の粘膜が「前がん病変」を経て子宮頸がんへ発生するとされております。

 

近年では子宮頸がんは乳がんと同様に2030代で増加傾向にあります。ごく初期のがんを除いては子宮摘出が治療となり、妊娠・出産への影響は大きく、毎年11,000人が子宮頸がんと診断され、2,800人が死亡しています。

 

また、HPVは、中咽頭がん、肛門がん、尖圭コンジローマ等も男性も罹患する病気の原因にもなるため、海外では女性だけでなく男性も予防接種対象とする国が増加しています。

積極的勧奨の対象者は

定期接種の対象者は2022年度に小学校6年生から高校1年生に相当する女性です。予診票や接種券はお住まいの市町村から郵送されてきます。接種に対応する医療機関も同封の案内が郵送されてきます。

 

子宮頸がんワクチンには、接種日用が無料である定期接種(公費対象)となっているものにはHPV1618を含む「サーバリックス(2価)」と「ガーダシル(4価)」の2種類があります。いずれも、6ヵ月間に3回接種することにより、5070%の子宮頸がん予防になるとされています。

 

これに加えて、20212月に発売された「シルガード99価)」のワクチンもありますが、こちらは自費となり、3回接種により費用は約10万円となります。9歳以上であれば接種は可能であり、子宮頸がんの約90%を防ぐことができるとされております。

 

男性はこれまで接種適応外でありましたが、9歳以上の男性は5万円程度の自費負担でありますが、前述の4価ワクチン「ガーダシル」を接種できるようになりました。

キャッチアップ接種

20211228日の厚生労働省の土により、HPVワクチンの積極的勧奨の差し控えにより接種機会が逃されていた方に、公平な接種機会を確保する観点から、平成9年度から平成17年度生まれ(誕生日が199742日から200641日)の女性、合計9学年に対してキャッチアップ接種を実施する方針となりました。期間は20224月から20253月までの3年間です。この結果として令和4年では17歳から25歳までの女性にも接種を行う方針となりました。キャッチアップ接種の対象者にも市町村から問診表・接種券が発送されることになりました。

 

HPVワクチンは、WHO15歳までに90%以上の女子が接種することを目標としており、国際的に効果と安全性が確立されたワクチンであります。その一方で、日本では接種後に生じた疼痛などの症状に苦しんでいる方への支援も実施しています。

 

※子宮頸がん予防(HPV)ワクチンの接種については、厚生労働省ホームページをご覧いただく、医療機関に相談するなど、ワクチンの安全性と有効性をご理解いただいたうえでご判断ください。

武井智昭

TOMOAKI TAKEI

高座渋谷つばさクリニック 院長

小児科医・内科医・アレルギー科医。2002年、慶応義塾大学医学部卒業。多くの病院・クリニックで小児科医・内科としての経験を積み、現在は高座渋谷つばさクリニック院長を務める。感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、0歳から100歳まで「1世紀を診療する医師」として地域医療に貢献している。