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えっ、一人3、000万円!?「子育ての費用」をシミュレーション【ママFPが解説】

2022年8月26日 10:00

子育てに関する出費といえば「教育費」をイメージする人がほとんどだと思いますが、実際には、教育費以外にもさまざまなお金がかかります。そこで、今回は、子育て全般にかかる費用と子どもの年齢ごとの教育費のシミュレーションを見える化したうえで、マネープランを立てる際のポイントについてお話します。

子育てにかかるお金は、大きく「養育費」と「教育費」

子育てには何かとお金がかかるものですが、子育てにかかる費用は大きく分けて「養育費」と「教育費」の2つがあります。

「養育費」とは、子どもの食費や洋服代、医療費などの子どもにかかる生活費、「教育費」とは、学校の授業料、習い事や塾の費用を指します。

まず、養育費から見ていきましょう。

子どもの養育費の例を見てみると、食費、生活用品費、被服費、医療費、レジャー費、子どもの通信費、お小遣いなどがあります。

AIU保険(現A I G損保)が発表した「現代子育て経済考2005年」の資料によると、出産から大学卒業予定までの22年間の養育費は、約1,640万円となっています。

17年前の資料なので、現在とは状況が違うところもあるかもしれませんが、参考にはなるでしょう。

<図表 22年間の養育費>

22年間の養育費が約1,640万円と聞くと、数字のインパクトにびっくりしてしまいますが、養育費は、日々の生活の中でかかるお金です。きちんと家計管理をした上で、毎月の家計から無理なく支出できるように支出をコントロールすることができれば大丈夫です。

子どもの年齢別、教育費シミュレーション

次に子育てにかかる費用の中でも多くを占める「教育費」について見ていきましょう。

教育費は、子どもの進学プランにより大きく違ってきますので、年齢別にかかる教育費を把握しましょう。保育園については、ご両親の収入により変わりますので、今回は幼稚園から大学までの教育費を見ていきます。

  • 幼稚園でかかる教育費

幼稚園は、3歳から通わせるのが一般的です。子どもが小さいうちは、比較的家計にゆとりがあるご家庭も多く、子どもを私立幼稚園に通わせるご家庭も少なくありません。

公立幼稚園と私立幼稚園では私立幼稚園の方が費用は高い傾向にありますが、2019年に幼児教育・保育の無償化が始まり家計の費用負担が軽くなっています。幼児教育・保育の無償化により、幼稚園、保育所、認定子ども園等を利用する3歳〜5歳までの子どもの利用料は無料となっています。

公立幼稚園と私立幼稚園を比べると、授業料の他に、学校外活動費に大きな差があります。一般的には私立幼稚園に子どもを通わせるご家庭は教育熱心な傾向があり、受験塾や習い事に多くの費用がかかっていると考えられます。

<図表 幼稚園でかかる教育費>

  • 小学校でかかる教育費

小学校は約2万校ありますが、そのうち私立小学校は1%程度です。ほとんどのご家庭で公立小学校に進学しています。公立小学校の場合、純粋に学校に納めるお金は10万円程度です。大半は、学校外活動費が占めています。学校外活動費は、各ご家庭の教育方針により、費用が変わってくるところといえます。

私立小学校は、6年間の学習費総額が900万円を超えています。学校教育費が多いのはもちろんですが、学校外活動費の負担も大きく、収入が多いご家庭でないとなかなか私立小学校に通わせるのは難しいでしょう。

<図表 小学校でかかる教育費>

  • 中学校でかかる教育費

中学は、公立中学と私立中学で学校教育費に約8 倍の差があります。私立は授業料や学校納付金が高いことに加えて、通学費にもお金がかかります。大都市圏では1時間圏内であれば十分に通学圏内に入るといわれています。

また、修学旅行、遠足なども公立中学に比べて費用が高い傾向にあります。公立中学では、泊まりがけの宿泊は修学旅行だけのことが多いのに対し、私立中学では、毎年スキー合宿があるなど、費用負担に差があります。

学校外活動費は、公立中学も私立中学も同程度で差がありません。これは、中学から部活動が始まったり、高校受験を控えて、本格的に塾代が嵩んできたりすることによるものと考えられます。

<図表 中学でかかる教育費>

  • 高校でかかる教育費

中学に比べて高校の方が学習費の総額は抑えられています。これは、201010月から高校授業料無償化が導入され、就学支援金によって授業料の負担が低く抑えられていることが主な理由です。

高校の場合は、公立、私立ともに、「高等学校等就学支援金(授業料の無償化)」、「私立高等学校等授業料軽減助成金(都道府県の制度)」があります。

高等学校等就学支援金は、日本に住んでいる子どもが高校に通う際の授業料を支給してくれる制度です。全国の約8割の生徒が利用しています。支給される金額は、公立高校の場合は118,800円、私立高校の場合は最高で396,000円です。これにより、国公立高校の授業料負担は実質0円に。私立高校の授業料負担もだいぶ軽減できるでしょう。

ただし、目安の年収が590万円以上になると、支給される金額は公立高校でも私立高校でも一律で118,800円になり、910万円以上になると対象外となり支給されなくなります。

<図表 高校でかかる教育費>

 

  • 大学でかかる教育費

大学の学費は教育費の山場と言われています。国公立大学よりも私立大学の方が学費は高くなり、加えて、私立大学の場合は、文系、理系によっても金額に差があります。理系の方が文系よりも年間で30万円〜40万円負担が重いイメージです。

また、大学での進学で学費以外に大きく影響するのが、自宅から通うのか、自宅外から通うのかです。日本学生支援機構「学生生活調査」2016年度によると、アパートなどの一人暮らしでは、年間約110万円の生活費がかかるとのこと。大学生であれば、アルバイトをするケースも多くなると思いますが、理系や医歯薬系では実験・実習科目が多いとなかなか時間が取れないこともあり、親が生活費なども全て負担しなくてはならないことも少なくありません。

<図表 大学でかかる教育費>

以上、幼稚園から大学までの教育費を見てきましたが、最後に幼稚園から大学まで全て公立の場合の総額と私立の場合の総額を比較してみましょう。大学は私立文系の場合とします。

公立の場合で約783万円、私立の場合で約2,230万円となっています。ここに冒頭でお話した養育費約1,640万円をプラスすると、子ども1人の子育ての費用は、すべて公立の場合で約2,400万円、すべて私立の場合で約3,870万円となります。

よく世間で言われている子ども1人を育てるのに3,000万円かかるというのは、決して、大袈裟な数字ではないということです。

中長期的なマネープランをしっかり立てること

これまで見てきた通り、子育てのなかでも教育費は特にお金がかかります。とはいえ、教育費はいつの段階で必要なのかが把握しやすいので、計画を立てやすいともいえます。

できれば子どもが小さいうちから漠然とでも良いので、進学プランを考え、塾代なども含めた教育費の総額を「見える化」してみましょう。いつの時点でいくら必要なのかを把握することで、教育費の資金計画が立てやすくなります。

また、教育費については、高校までの費用は家計から捻出するのが基本的な考え方です。

今回教育費の試算をするにあたり活用した文部科学省の子どもの学習費調査から毎月の家計から支払う高校まで費用の目安を試算すると、公立に通う場合は、小学校で月27,000円、中学と高校は月4万円程度です。一方で私立の場合は、小学校と中学では、月1012万円、高校は月78万円程度です。こちらの金額が家計から出せるかを確認してみてください。

そして、大学は4年間で300万~500万円程度かかるので、この費用を子どもが小さいときから、18歳になるまでコツコツと貯めていきましょう。

今回は教育費を中心にお話をしましたが、教育費の他にも、人生を生きるうえで様々なお金がかかります。特に教育資金に加えて、住宅資金、老後資金は、人生の3大資金といわれており、この3つの資金のうちどれか1つでも大きくバランスを崩すと、その後のライフプランに大きく影響を及ぼします。

目先のお金のやりくりに追われるのではなく、人生全体でのお金の「見える化」をして、いつの段階でどれくらいの資金が必要なのかを把握しましょう。全体を見える化することにより、様々なイベントに対して、いつまでにいくら必要なのか、目標を達成するためにはどうしたら良いのかを具体的に考えることができるようになります。お時間のある時にぜひ、中長期的なマネープランを作成してみてくださいね。

高山一恵

takayama kazue

ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者)・ 1級ファイナンシャル・プランニング技能士

株式会社Money&You(https://moneyandyou.jp/)取締役。東京都出身。慶應義塾大学文学部卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを創業。10年間取締役を務めた後、現職へ。女性向けWEBメディア『FP Cafe®』や『Mocha』を運営。また、『Money&You TV』や「マネラジ。」「Voicy」などでも情報を発信している。全国での講演活動、執筆、マネー相談を通じて、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく、親しみやすい講演には定評がある。