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保護者の多くが抱える「おねしょ」の悩み…すぐに受診すべきといえるワケ~夜尿症の診断基準と治療の変化~

2022年3月31日 11:42

夜尿症とは、いわゆる「おねしょ」とも呼ばれる症状です。乳児では腎臓の機能が未熟で、尿を濃くして貯めることができず、排尿の感覚がないために眠っている間に排尿をします。

 

年齢とともにこうした機能は改善していきますが、ある程度の年齢となると「おねしょ」をすることで自尊心が傷つき、他人から叱られて精神的につらい思いをする経験もあるかと思います。本記事では、近年変更となったガイドラインに基づき、夜尿症について述べていきます。

夜尿症診療のガイドライン

2021年に改定となったガイドラインでは、5歳以上の子どもが月1回以上のおねしょをしていて、この状態が3ヵ月以上続く状態を夜尿症と定義しています。また、昼間でも尿が多い、排尿時に違和感・痛みがある状態を「非単一症候性夜尿症」、夜尿症以外に排尿に関して症状がない状態を「単一症候性夜尿症」と分類します。

夜尿症の3つの原因

夜尿症の原因には複数の要因が関与しているものと推定されています。その1つとして、就寝中は尿を濃くして排尿量を低下させる「抗利尿ホルモン(バソプレシン)」が脳から分泌されているのですが、この量が少ないと夜間の尿量が増加することが示唆されています。

 

このほかにも排尿するための筋肉の活動が活発となっていること、深い睡眠であることが原因と考えられています。

 

また、前述したように、昼にも症状がある「非単一症候性夜尿症」に多いのですが、先天的な腎臓・尿管・膀胱の先天的な奇形、神経疾患(てんかんや二分脊椎など)、ストレスなども関与しています。

夜尿症「年齢別」の頻度

夜尿症は診断時の5歳では、1015%の頻度で、とくに男児に発症しやすいものです。その後は年齢とともに頻度が減少してきますが、10歳で23%、15歳で1%程度、成人となっても0.5%程度で症状が持続する場合があります。

夜尿症の受診の目安・診療は

5歳になって生活に困っていることを本人あるいは家族が気付いたときに、受診を検討してみてください。年齢の上昇とともに、宿泊行事などで強い不安や劣等感を抱くようになるケースが多く、受診の契機となります。生活での支障や精神的な苦痛がある場合には、一括して対応できる小児科の受診をおすすめします。理由としては、夜尿症だけではなく、他の疾患の可能性も精査する必要があるためです。

夜尿症での受診時の流れ

医師の問診では、これまでの夜尿の経過や排尿の状況、便秘の有無(便秘改善で治るケースもあります)、生活面では就寝前の水分摂取の量とその時間、カフェイン入り飲料の摂取量が確認されます。あわせて尿路感染症の既往や家族歴が聴取されます。

 

身体診察に加えて、血液検査(内分泌疾患など他の有無)、尿検査、腎臓などの腹部超音波検査(先天奇形の評価)が実施されることが多いです。

 

受診後は、飲水・おねしょの頻度とそのレベル(濡れてしまう部分が下着だけか布団までかなど)の日誌記録が推奨されます。

 

治療は生活指導、薬物治療に大別されます。生活指導は子供と家族に対しての対応で、就寝2時間前の水分をとらない、就寝時には冷えを防ぐための対応(ふとんをしっかりかけるなど)、トイレに行く習慣をつけるなどがあります。

 

薬物療法としては、尿量を夜間減量させる「デスモプレシン」の内服治療を開始する場合が多いです。この治療により、7割程度の方が数ヵ月程度で夜尿の頻度が減少しています。

 

これに加えて、センサーを装着して就寝中の排尿を知らせるアラーム療法も実施する場合もあります。他の薬剤(抗コリン薬、漢方など)を組み合わせる場合もあります。

 

こうした治療に反応がない場合には、基幹病院での精査(二分脊椎などの神経疾患、内分泌疾患など)が実施されます。

 

上記治療による効果は、自然経過と比べて23倍程度高いとされているため、心配であれば小児科へご相談されることをおすすめします。

 

武井智昭

TOMOAKI TAKEI

高座渋谷つばさクリニック 院長

小児科医・内科医・アレルギー科医。2002年、慶応義塾大学医学部卒業。多くの病院・クリニックで小児科医・内科としての経験を積み、現在は高座渋谷つばさクリニック院長を務める。感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、0歳から100歳まで「1世紀を診療する医師」として地域医療に貢献している。