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子どもの愛着障害とは?特徴や発達障害との違いを解説【精神科看護師監修】

2023年10月16日 11:42

愛着障害という障害をご存じでしょうか。対人関係がうまくいかず、放置すれば社会に適応できなくなる可能性のある深刻な障害です。愛着障害の症状や特徴、原因について、精神科看護師のひまわりさんにお話をうかがいました。

そもそも愛着とは?愛着はどうやって形成されるの?

心理学的には、「相手を大事に思う気持ちに支えられた絆のこと」を愛着といいます。

愛着を形成するのに、何か特別なことや難しいことは必要ありません。たとえば赤ちゃんであれば、お母さんやお父さんの声掛けや、抱っこなどのスキンシップやタッチングなど、日々のコミュニケーションを通じて愛着は形成されていきます。

愛着障害とその原因

愛着障害とは、親などの養育者との絆が何らかの原因で形成されず、子どもの対人関係などに問題が生じている状態のことです。

愛着障害が起きる原因は、おもに次のような虐待などの不適切な養育環境にあります。

①叩く、蹴るなど身体的虐待
②暴言などの心理的虐待
③性的虐待
④ネグレクト
⑤両親の不在や離婚による家庭環境の変化

親に虐待する意思がなくても、昼夜働く必要があるなどで、子どもと関わる時間が極端に少なくなってしまうと、愛着障害につながってしまう可能性があります。また、夫婦げんかも心理的虐待に含まれることがありますので、注意してください。

とくに生まれてから5歳くらいまでのあいだに不適切な環境にあると愛着障害になりやすいですが、5歳以降であっても、家庭環境の変化や虐待により愛着障害が出ることもあります。

愛着障害の分類

愛着障害には、「反応性愛着障害」と「脱抑制性型対人交流障害」の2つの分類があります。

①「反応性愛着障害」とは

素直に甘えたり頼ったりできなくなる障害です。この障害があると喜怒哀楽の感情が乏しく、無表情になりがちです。また、頼ったり頼られたりできないので、自己評価が低くなってしまいます。人との交流の仕方がわからず、何かしらの虐待が原因で人に対する恐怖心もあるので、ほかの子どもと交流したがらないのも特徴です。

②「脱抑制性型対人交流障害」とは

反応性愛着障害とは逆に、知らない人にも甘えてしまったり、初めての場所にも走って行ってしまったりなど、人や環境に対して警戒心がなくなってしまう障害です。重度のネグレクトが原因で、養育者に甘えたいのに甘えさせてもらえないため、他人に対して甘えるという行動に出てしまいます。ほかの子どもと交流することはできますが、距離感がわからず必要以上に近寄ってしまいます。その反面、人の言葉や行動をストレートに受け止めがちで、傷つきやすいという特徴があります。

愛着障害と発達障害とは違うの?

発達障害が先天性であるのに対し、愛着障害は虐待などを原因とする後天的なもので、この2つはまったく異なるものです。しかし、とくに脱抑制性型対人交流障害の場合、走り出したりなど発達障害に似ている症状があるため、愛着障害であるにもかかわらず発達障害であると診断されてしまうことがゼロではありません。発達障害と診断されても、症状がよくならないなどの場合は、セカンドオピニオンやサードオピニオンを受けてみることをおすすめします。

愛着障害の対処法

愛着障害の子どもには、まず安全基地と呼ばれる、困ったときや不安、恐怖を感じたときに守ってもらえる「よりどころ」を作る必要があります。本来なら安全基地は親であるべきですが、虐待などでそれが難しい場合は、祖父母などの親族、それも困難であれば、かかりつけのお医者さんに協力してもらって、カウンセリングなどを受けてみてください。子どもが愛着障害である場合、その親御さん自身同じように育てられて愛着障害であることが多々あります。そのため、親子で一緒に専門家に相談して、支援を受けるのが解決の近道です。

安全基地ができたら、子どもと過ごす時間を増やして、しっかり顔を見て声をかけてあげるなど、たくさんコミュニケーションを取るようにします。子どもが言ったことを全否定しないよう気をつけることも大切です。

愛着障害を抱えたまま成長すれば、不登校になったり就職できなかったりなど、社会に出てもうまくいかないケースが少なくありません。できるかぎり早めに対処してあげることが必要です。

愛着を育むためには

愛着を育むためには、何か特別なことは必要ではありません。愛着は日々のコミュニケーションを通じて形成されていくものです。しかし、親になる人は愛着とは何かをよく理解し、自分の子どもとのあいだに愛着を形成するという意識をしっかり持っておくことが大切です。

親御さんの中には、自分が親になったのが間違いだったという考え方を持つ人もいますが、親御さんも一緒に少しずつ成長すればよいので、自分を責めずに前向きに進んでいきましょう。

不安なときは早めに相談を

自分の子どもが何らかの障害を持っているのでは、と感じることがもしあれば、勇気を出して病院や自治体の相談所などに行ってみてほしいと思います。お子さんに発達障害などがあった場合、早くにわかるということがとても大事だからです。反抗期や思春期に入ってしまうと、なかなか支援がしにくく治療にも時間がかかってしまいます。小さい頃から対応すれば、早く通常の暮らしができるようになります。

子育てに不安があるのはみな同じです。不安や心配事があればひとりで抱え込まず、保育士や学校の先生、ネットの専門家などに、積極的に頼って相談してください。

ひまわり

himawari

精神科看護師

精神科の看護師、また発達障害の2児の母として、グレーゾーンの子育てや療育を楽しく乗り越えるための情報を発信中。個人相談やセミナーなどのコーチングも行っている。

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