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子どもの目鼻ムズムズは花粉症のサイン!?自己判断が危険なワケを小児科医が解説

2023年2月8日 10:00

花粉が気になる季節。子どもがくしゃみを連発し、鼻をぐずぐずさせている様子を見て「まさかうちの子、花粉症?」と心配になる親御さんも多いかもしれません。

国民病と言われて久しい花粉症ですが、子どもも花粉症になるのか、子どもならではの症状や対策はあるのか。今回は地方国立大学小児科の「りすさん小児科医」に子どもの花粉症についてお話を伺いました。

花粉症は住むエリアによっても変わる

毎年2月頃から花粉の飛散量が発表されます。スギ花粉は3月にかけてピークを迎えますが、追ってヒノキ花粉、カバノキ科やイネ科、キク科の花粉なども飛散し、時期や地域によって量が異なります。

たとえば北海道はスギ、ヒノキの花粉症はほとんどない代わりにカバノキ科花粉症が見られ、沖縄は花粉の飛散そのものが少ないので花粉症の患者さんが少ないです。お住まいのエリアで、飛散時期や飛散量、どのような花粉が多いのかをチェックしてみてもいいかもしれません。

子どもも花粉症になるのか

結論からいいますと、子どもにも花粉症はあります。従来は、早くて年長さんや小学校低学年くらいで症状が見られる子もいましたが、最近の傾向としてはそれよりも低年齢での発症が増えてきた印象があります。

子どもが花粉症になる原因は大人と同じです。低年齢で発症する子というのは、それだけアレルギー体質の傾向が強く、花粉症に限らず喘息やアレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎などを発症するリスクも高いと言えます。また遺伝の影響もあり、両親共に何らかのアレルギー疾患を持っている場合は、それがない場合に比べて花粉症の発生率は高いと考えられます。

症状についても基本的には大人同様で、鼻水、くしゃみ、鼻詰まり、目の痒みなどです。あえて言うなら子どもは鼻腔内が狭いので、鼻詰まりを強く訴える傾向があります。ただそれも主観によるところが大きいので、一概には言い切れません。

子どもの花粉症の対策と治療法

花粉症の対策①:マスクやメガネで花粉を回避

花粉症の対策は何よりも抗原となる花粉を回避することです。マスクやメガネの使用は子どもにも有効で、ここ数年のマスク生活で症状が軽減している方も多いと思います。幼児の場合は必ずしも推奨とは言えませんが、一般的にはこれが基本になります。

花粉症を気にするあまり外遊びに積極的になれない親御さんもいるかもしれません。ですが日光照射によって体内で生成されるビタミンDは、健やかな成長に欠かせないものです。しっかりと対策をして外で思い切り遊んだ方が、トータルで健康を考える上では良いと思います。

花粉症の対策②:点鼻・点眼薬などの薬物療法

次に内服や点鼻、点眼薬などの薬物療法です。鼻症状(アレルギー性鼻炎)に対しては、小児は第1選択として抗ヒスタミン薬の内服を行い、効果不十分であれば、ステロイド点鼻薬を追加します。

点鼻の方が抗ヒスタミン薬の内服より効果が高く、海外では点鼻から開始する地域もあります。眼症状(アレルギー性結膜炎)に対しては点眼治療が中心になります。点鼻や点眼は頓用使用ではなく、あくまで用法通り連日使用するものですので、医師の指示があるまでは自己判断で中止しないようにしましょう。

5歳から適応とされる「舌下免疫療法」とは

以上は花粉症の症状を軽減させるための対策ですが、スギ花粉の反応への介入方法もあります。舌下免疫療法といって、舌の下に錠剤を1分間置いてから飲み込むという治療方法です。5歳から適応とされていますが、舌の下に1分間薬を置いたままにするという行為ができれば、さらに低年齢から始めることもできます。

舌下免疫療法はアレルギー性鼻炎において推奨されています。注意点は、最低3年間は毎日服薬が必要なこと、月に1度は通院が必要なこと、そして軽微なものを含めて約半数で副作用が出ることです。アレルギー体質が強い方ほど副作用も強く出るので、場合によっては喘息の発作などにつながるリスクもあります。ですから舌下免疫療法は、小児は耳鼻科ではなく小児科で受けるようにしてください。

春先のムズムズ=花粉症とは限らない!

花粉が飛ぶ時期に子どもが目を痒がったり、透明な鼻水が出ているからといってすぐに花粉症だと自己判断するのは少し危険です。というのも子どもの場合、鼻水や鼻腔内の粘膜の性状が大人の典型的な花粉症と同じにならないケースが多く、医師でも診断に迷うこともあります。さらに保育園や幼稚園などに通っている場合は、何らかのウイルス感染症(風邪)が関与していることの方が多い印象を受けます。

鼻水が出ている子どもを見て、風邪なのか花粉症なのかと気になる場合、しっかりと熱があれば風邪の可能性が高いです。しかし熱が出ない風邪ももちろん多く、集団保育の場面では多くのケースで花粉症単体ではなく、感染の関与が疑われますので、少しでも気になる症状があった時は小児科を受診して下さい。

ちなみにアレルギー検査をすれば花粉症の診断ができるのかと聞かれることもありますが、これはあくまで体質をスクリーニングするための検査です。診断補助にはなりますが、診断を確定させるために使うものではありません。

子どもの目鼻のぐずぐずには、小児科がおすすめ

子どもが目鼻をぐずぐずさせている時に、一体何科を受診させたらよいのかと迷う親御さんもいらっしゃるかもしれません。大人の場合は、症状によって耳鼻科や眼科、内科を受診する方もいらっしゃいます。しかし、花粉症罹患者における喘息合併率が高いため、自覚症状の訴えがはっきりしない小児期においては、聴診器を扱う小児科を受診するようにして下さい。

小児科では、集団保育の有無や兄弟の有無、既往歴や家族歴なども含めてトータルでアレルギー診療を行っていくことになります。ですから、なるべく小児科はかかりつけを固定していただくことをおすすめします。そしてアレルギーのお薬が出た場合は、医師から言われた期間は必ず使用するようにしてください。薬によっては効果が出るまで2週間程度かかるものもあります。すぐに効果がないからと服薬をやめたり、病院を変えたりせずに、少なくとも2週間は様子を見ていただきたいと思います。

りすさん小児科医

risusanshounika

小児科医

地方国立大学の小児科医局員として現在一般病院に勤務。小児科医局のアレルギーグループに所属し、新生児・小児の一般診療のほか、食物アレルギー・気管支喘息・アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎といったアレルギー診療にも従事している。