インタビュー

【歯科医監修】子どもの歯磨きはいつから?正しい磨き方&嫌がるときの対処法

2023年10月12日 14:10

子どもを虫歯から守るためにしっかり歯磨きしてあげたい―そう思って頑張っているのに、仕上げ磨きを嫌がってなかなか磨かせてくれない、などなど、子どもの歯磨きにまつわる悩みを抱えるお母さんお父さんはたくさんいらっしゃると思います。

そこで今回は、歯医者ゆうこ先生に、子どもの歯の磨き方のコツや虫歯予防についてお話をうかがいました。

子どもの歯磨きはいつから? 歯が生えるまでは歯磨きをしなくてもよい?

歯磨きそのものをはじめるのは歯が生えてからでかまいません。しかし、歯が生える前から、赤ちゃんが歯磨きに慣れるための準備にぜひ取り組んでいただきたいと思います。

お母さんの出産後の疲れが落ち着いてからでよいので、赤ちゃんのお口の周りをたくさん触ってあげてください。ほっぺをなでたり優しくつねったり、くすぐったりなど、赤ちゃんが口の周りを触られる感覚に慣れるためのスキンシップをしてあげましょう。そうすることで、歯が生えてきたときに、歯磨きへスムーズに移行できます。

赤ちゃんの歯の磨き方

赤ちゃん用の歯ブラシを使用

赤ちゃんがお口を触られることに慣れていていれば、赤ちゃん用の歯ブラシで歯が生えたところを磨いてあげましょう。赤ちゃん用の持ち手が丸いものでもいいですし、子どもに持たせず親御さんが磨いてあげるためのものであれば、普通の柄のついたこども用の歯ブラシでもOKです。

歯ブラシを嫌がったらガーゼで慣らす

歯ブラシを嫌がる赤ちゃんの場合は、まずガーゼではじめて慣らしてあげましょう。お子さんが虫歯にならないようにと歯磨きには神経質になってしまいがちですが、離乳食がはじまるまでは、歯にそれほど汚れはつかないので、あまり心配しなくても大丈夫です。むしろ、はじめは汚れを取るよりもスキンシップの時間として、楽しく歯磨きに取り組んでみてください。

使い終わった仕上げ用の歯ブラシを練習用に

子どもが自分で磨く練習をはじめると、歯ブラシを嚙んでしまってすぐに毛先が開いてしまうという声をよく聞きます。歯磨き練習の最初の頃はまだ自分で磨けるということはないので、仕上げ用の歯ブラシの使い終わったものを子どもの練習用に回してあげると経済的です。もちろん、子どもが大きくなってきてしっかり歯磨き練習できるようになったら、新しい練習用歯ブラシをあげてくださいね。

基本的な子どもの歯磨きの仕方

歯ブラシを細かく動かして、歯を一本ずつ磨いてあげましょう。歯茎の際は汚れが残ってしまいがちなので、際までしっかりと磨いてあげてください。磨き残しがないようにするには、たとえばまず上の歯の頬っぺた側、次に噛むところ、そして裏側というように、「一筆書き」で磨いてあげるのがおすすめです。

年齢別の虫歯のできやすい場所と注意点

〜2歳

2歳くらいまでは前歯の外側の、歯茎の際の部分が虫歯になりやすいです。哺乳瓶にジュースなどを入れて飲ませてそのまま寝かせてしまうと虫歯の原因になるので、注意してください。

2歳〜3歳

2歳から3歳くらいでは、歯と歯に隙間がないお子さんは、歯と歯のあいだが虫歯になりやすいので注意しましょう。歯ブラシだけでは取れない汚れなので、フロス(糸ようじ)を使うのがおすすめです。

3歳〜3歳半

3歳から3歳半くらいでは、奥歯の噛むところにある溝に汚れがたまりやすく虫歯になりやすいので、しっかり磨いてあげてください。

4歳〜5歳

4歳から5歳になると、奥歯の隙間が詰まってくるので、歯のあいだに虫歯ができやすくなります。この場所にできた虫歯は見つけにくく、知らないあいだに虫歯が進行していたということもあります。ここもフロスを使って汚れを取ってあげましょう。

6歳〜

6歳になると一番奥にいわゆる6歳臼歯という永久歯が生えてきます。歯ブラシが届きにくいので、注意して磨いてあげてください。

子どもの虫歯を作らないためのポイント

①フッ素入り歯磨き粉がおすすめ

まず歯磨きが大事ですが、フッ素入りの歯磨き粉を使うと効果的です。フッ素について安全性を気にする方もいらっしゃるかもしれませんが、歯磨き粉に入っているのはフッ化物という物質で、安全性が証明されています。またこれまでの調査で56%の子どもに虫歯の予防効果があったということも報告されているので、ぜひ使っていただきたいと思います。フッ素入りの歯磨き粉はフッ素の濃度によって効果や使用量が違ってくるので、歯医者さんで相談してみてください。歯磨き粉の感触が気持ち悪いというお子さんにはジェルタイプがおすすめです。つけたあとに口をゆすがなくてもOKです。

②おやつは回数を決めて歯によいものを

おやつについては、量よりも回数に気をつけることが大切です。とくに小さい子どもの場合は一度に食べられる量が少ないので、おやつを食事の1回として捉えるとよいでしょう。おやつに食べるのは甘いお菓子ではなく、サツマイモやおにぎり、卵、冷凍のフルーツなどがおすすめです。

味覚は3歳までに作られるので、3歳まではあまり甘いものを食べさせ過ぎないのが理想ですが、上の兄弟が食べていたりで、ついお菓子を食べさせてしまうことはあると思います。虫歯予防という観点からは、甘いお菓子は食べないのがよいのですが、もしも食べるのであれば、食後すぐに食べると比較的虫歯にはなりにくいです。とはいえ、とくにチョコレートなどは虫歯になりやすい砂糖がたくさん入っていて歯の溝にもくっつきやすいので、重々注意してください。

③だらだら飲み食いしない

長い時間をかけてちょっとずつ飲み食いすると、そのあいだ口の中はむし歯になりやすい状態が続いてしまいます。とくにジュースはだらだら飲んでしまいやすいので注意しましょう。健康によいとされる野菜ジュースやヤクルトにも糖分はたくさん入っているので、だらだら飲みに気をつけてください。

子どもに嫌がられない仕上げ磨きのコツ

①力加減に気をつける

しっかり磨いてあげなければという気持ちから、つい力が入ってしまいがちですが、あまり力を入れすぎないように気をつけてください。

また、上の唇の裏にある上唇小帯に歯ブラシが当たると嫌がる子どもが多いので、歯ブラシが当たらないように指でカバーしてあげるとよいでしょう。

②歯磨きが怖くないことを教えてあげる

何をされるのかわからなくて怖いと感じてしまう子どもには、お父さんとお母さんで磨き合いっこしてみるなど、実際に仕上げ歯磨きの様子を見せてあげるのがおすすめです。また、お気に入りのぬいぐるみがあれば、ぬいぐるみを歯磨きして見せてあげるのも効果的です。反対に、お母さんが子どもに磨いてもらってみるのもよいでしょう(安全面から、大人がもう1人そばにいるのが好ましいです)。

③てきぱき終わらせる

素早く終わらせるのもポイントです。汚れの状態にもよりますが、一カ所10秒くらいでOKです。

④褒めてあげる

仕上げ歯磨きが終わったら、上手にできたね、と褒めてあげましょう。できていなくても褒めてあげることで、楽しい経験となって、次のやる気へとつながります。

⑤すぐ使える仕上げ磨きの技

まず、「イーってしてね」と言って、前歯を磨きます。次に「カバさんみたいにアーってしてね」と言って噛む面と裏側を磨きます。イーとアーの2種類の口の形だけなので、子どもにとっても分かりやすいと思います。

楽しく習慣化することが大切!

子どもが虫歯にならないようにと、つい歯磨きに力が入りすぎてしまうお母さんお父さんが多いと思いますが、一番大事なのはお子さんも親御さんも楽しく習慣化できることだと思います。離乳食がはじまる頃まではあまり虫歯にはならないので、その最初の期間でお子さんとスキンシップしながら、焦らず楽しく歯磨きができるようになるとよいと思います。食べる回数が増えたりおやつを食べはじめたりすると、だんだん虫歯になりやすくなってくるので、フッ素などを上手に取り入れて虫歯予防をしていってください。

歯科医ゆうこ先生

yuuko

歯科医

歯学部を卒業後、一般開業医での勤務を経て渡米。アメリカで最先端の虫歯研究に従事し、その後帰国。日本の歯科予防のレベル向上を目指して活動中。SNSで歯の健康に関する情報を発信。

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