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【歯科医監修】子どもはむし歯になりやすい?知っておきたい「むし歯予防」9つのポイント
2022年11月18日 10:00
むし歯は子どもに多い印象がありますが、それは一体なぜなのか、そしてむし歯予防のためにはどんな点に注意すればよいのでしょうか。
子どもの歯の特徴やむし歯の治療、日常生活で心がけたい歯みがきのポイントなどについて、中村希美歯科医師にお聞きしました。
~目次~
【ポイント1】むし歯になる原因を知る
子どものむし歯を減らそうという運動は以前から続いています。そうした取り組みが功を奏し、3歳と12歳の調査ではむし歯の割合が減っているという調査があります。
子どもがむし歯になる原因はいくつかあります。
まず、生え替わる前の「乳歯」は永久歯に比べて柔らかいため、食事や口内環境の影響で溶けやすい、つまり「歯の質が弱い」という特徴があります。また、歯の厚みも永久歯に比べると半分ぐらいなので、いったんむし歯になるとすぐに進行してしまいます。
そもそもむし歯とは、むし歯菌が出す酸が歯の表面のエナメル質を溶かしてしまうことで起こりますが、甘いものなどを多く食べると口の中でむし歯菌が活動しやすい状態になります。
そのため、甘いものを食べることが多い子どもはむし歯になりやすく、さらに口の中に違和感があってもそれを表現できないために発見が遅れてしまう場合があります。
【ポイント2】子どもの歯の異変をチェックする
むし歯は歯の表面に起こってもその時点では感覚はなく、神経に近いところまで進行すると痛みを感じるようになります。子どものむし歯は進行が早いため、できれば親の目でチェックして、早めに子どもの歯の変化に気づくことが大切です。
たとえば歯が白く濁って見える場合は初期のむし歯の可能性があり、黄色っぽい場合は歯石がついている可能性があります。
それ以外にも食べるペースがいつもより遅くなったとか、口の中を気にしてよく手を入れている、調子が悪そうで機嫌が悪いなどの徴候があり、むし歯の危険性があると思ったら、自己判断は避けて歯科医院を受診しましょう。
【ポイント3】むし歯の疑いを放置しない
むし歯が疑わしいのにそのまま放置してしまうと、痛みもだんだんと強くなります。そして硬いものを噛めなくなったり、甘いものや酸っぱいものがしみたりするため、それらを避けがちになり、偏食にもなりやすいのです。
長く放置して歯がぼろぼろになり、口の中で「崩壊」という事態が起こると、周りの歯にも影響を与えますし、痛くて噛めないままだとあごの発達も促されないため、成長にも支障が出てしまいます。
乳歯だから放っておいてよいということはありません。むしろ乳歯だからこそ、生え変わりの時期が来るまできちんとそこにとどめておかないと、永久歯の歯並びが悪くなることもあります。
【ポイント4】早めの受診&フッ素塗布が有効
歯医治療に慣れるためにも定期的に歯科医院を受診すると、異変を早めに見つけることもできます。
子どもの歯の問題で受診するきっかけとして、1歳半検診で歯に関する指摘を受けたり、虫歯予防のためにフッ素(フッ化物)を塗ったりする場合が多いですが、歯が生え始めたらトラブルがなくても2、3か月に1回ぐらいのペースで受診するのがよいでしょう。
歯科医院でのフッ素塗布は濃度が高く、3、4ヵ月おきぐらいに行うのが推奨され、歯のトラブルがない場合でも半年に1回は歯科医院を受診しましょう。
また、歯の生え替わりはだいたい5、6歳頃、小学1年生前後に始まることが多いですが、そのタイミングの受診の際は、矯正治療が必要かの判断をしてもらうこともおすすめします。
【ポイント5】定期的な治療で負担減
進行状況によって、穴が開いていれば削り、プラスチックの詰め物などの人工の材料で埋めていくのが基本的なむし歯の治療です。
ただし子どもの場合、歯科治療を怖がったり、拒否感が強かったりする場合にはフッ素で進行を抑えていくこともあります。ひどく嫌がっているのに無理に押さえつけたりすると、「歯医者さんは怖いところ」だという印象ばかりがずっと残ってしまいます。
ですから状況によって無理に治療を進めず、できるところまでにとどめる場合もあります。そうした事態を防ぐためにも、痛くなってから駆け込むより、定期的に通うほうが子どもへの負担も少なくてすみます。
【ポイント6】シュガーコントロールも欠かせない
むし歯予防のために食生活で気をつけるべきなのは、砂糖を多く含む甘い物のとり方に注意する「シュガーコントロール」です。
健康な状態でも食事によって歯の表面は少し溶けますが、だ液が酸を中和して歯の表面の再石灰化を促しています。ところがだらだらと食べ続けていると、常に口の中で歯が溶け続けるため、むし歯のリスクが高くなります。
ですから、おやつの時間や回数はある程度決めておき、とくに歯にくっつきやすいキャラメルなどは控えめにすること。飲みものは100%の果汁でも糖分は含まれているため、際限なくジュースや清涼飲料水を飲むのも気をつけたいものです。
【ポイント7】食後の歯みがきを習慣に
むし歯を防ぐには「フッ素入りの歯みがき剤」を使うこと。そして「食後の歯みがき」を習慣づけることです。
3歳くらいまでは歯みがきを嫌がる子どもも多く、親の手による「仕上げみがき」も大切です。そうなると忙しい朝などには対応しきれないことも多いでしょうが、どうしても時間がとれない場合には食後にお水とかお茶を飲ませ、できるなら口をゆすぐようにしましょう。
日中、幼稚園・保育園では食後の歯みがきに対応していないところも多いため、夜は必ず自宅で歯みがきを欠かさないようにすることです。
ある研究では、1日2回フッ素入りの歯磨き粉で磨いていると、1日1回の場合に比べてむし歯のリスクが少なく、2回と3回ではそれほど差がないという報告があります。
ですから、朝と夜になるべく欠かさず行いたいものです。
【ポイント8】歯みがきのコツとプラスα
おすすめは「一筆書き」の要領でみがくことです。
上の歯のほっぺた側を端から順にみがいていき、次にその裏側、そしてものを噛む面をみがいたら下の歯へ移ります、そして同じようにぐるっとみがくのです。順番を決めておくと、みがき残しがなくなります。
それができない場合は、注意すべきポイントを重点的にみがきましょう。
2歳頃までは上の前歯の表側、とくにその根元の部分や歯と歯の間がむし歯になりやすいので、そのあたりを重点的に。下の前歯は唾液で常に潤っているため、むし歯にはなりにくいところです。
2歳半から3歳ぐらいで奥歯が生えそろってくるので、その時期は奥歯の噛む面がポイントです。4、5歳でも歯と歯の間、とくに奥歯の間などが虫歯になりやすいため、そこを重点的に行いましょう。
フロスは年齢に関係なく、2本の隣り合う歯があればそこには歯と歯の間ができますから、いつ始めても問題ありません。うまく使えていないと予防にならないといわれますが、子どものうちから歯みがきとセットで習慣づけることには十分意味があります。
また、フッ素洗口液でブクブクうがいをすることもむし歯予防になります。子どもの場合、飲み込んでしまうリスクがあるので、ぶくぶくうがいができる4歳以上が推奨です。
磨けているかをチェックするには、口に含むと歯の磨き残しが赤く染まる「歯垢染色剤」が市販されていますので、それを使うと磨き残しを調べることができます。
【ポイント9】歯みがきを楽しい時間にする
「むし歯にさせたくない」という思いをお持ちのお父さん・お母さんも多いのですが、最初は口の中に歯ブラシを入れられただけでも100点なのです。続けるためには楽しい時間にすることを心がけましょう。
好きな歌を歌ってあげるのもよいですし、家族で一緒に歯みがきをして、子どもがお父さん・お母さんの歯みがきをしてあげる「みがきあいっこ」をするのも楽しいものです。
また電車が好きなら歯ブラシを電車に見立てて声かけをしたり、好きなキャラクターの歯ブラシやぬいぐるみを効果的に使ったり、好きなことと組み合わせるのがポイントです。
そして「歯みがきって歯がピカピカになって気持ちいいよ」などの声かけをして、毎日の習慣をプラスにとらえられるようにしていきましょう。
中村希美
Nozomi Nakamura
歯科医師
歯科医師。日本歯科大学卒業。日本歯科大学附属病院臨床研修修了。母子栄養協会 幼児食アドバイザー。一児の母でもあり、子どもの歯に関する造詣も深い。小児歯科では保護者同席で治療を行い、歯みがき指導や食育にも力を入れている。