インタビュー #発達障害

【小児漢方医解説】漢方薬は子どもも飲める?夜泣きや発達障害に漢方を使うメリット

2023年3月23日 10:00

ドラッグストアで購入できたり、病院で処方されることも多くなってきた漢方薬。身近になりつつあるものの、まだまだ”大人の薬”という印象はないでしょうか?

今回は、3万人以上の親子の診察経験をお持ちの小児漢方医 鈴村水鳥さんにインタビュー。子どもの病気や困った症状に漢方薬をおすすめする理由とそのメリットについて話を伺いました。

「気・血・水」の流れが健康をつくる

東洋医学では、「気・血・水」という3つの要素が人間の体を構成していると考えます。気はエネルギー、血は血液や栄養、水はリンパ液などです。気血水が、過不足なく、体全体をスムーズに流れてる状態が健康です。

病気や不調は、気血水が「どの場所」で不足しているか、流れが悪くなっているかを考えます。その場所こそが、五臓「肝」「心」「脾」「肺」「腎」です。つまり、東洋医学では「どこの場所」で、気血水の中の「何が」バランスを崩しているかを考え、そのバランスを整える治療をします。

漢方薬と西洋薬の違いとは?

普段なじみのある西洋薬は、体の悪いところに対して一人のメンバーが素早く働きかける一点突破型。一方で、漢方薬は1つの薬の中に複数の成分が入っていて、それぞれの力を合わせるチーム型です。

例として、花粉症について説明します。西洋薬の代表は主に抗ヒスタミン薬です。ヒスタミンが受容体に結合することを抑えることで痒みなどのアレルギー症状を緩和します。

漢方薬の代表は小青竜湯です。小青竜湯は、麻黄、桂皮、芍薬、半夏、五味子、細辛、乾姜、甘草の8つの成分から作られています。麻黄が咳を抑え、麻黄と桂皮が発汗させ、細辛と乾姜が体を温め、五味子と半夏が痰を除去します。

それぞれ症状に対するアプローチ方法や働き方が違うので、どちらも上手に利用すると良いでしょう。

漢方薬は基本的に大人も子どもも同じものを使用します。子どもにとっての漢方薬の最大のメリットは0歳から飲めること。年齢制限があって西洋薬を飲ませることができない場合は、漢方薬が第1選択薬になります。

また、西洋薬を飲み続けているお子さんが、成長や症状に合わせて薬の量が増えてしまうケースもあります。そのような時は漢方薬を足して全体のバランスを取ることで、西洋薬の減薬につなげることもできます。

子どもの発達障害に漢方薬を使うメリット

漢方は、基本的に適用できない病気はありません。例えば風邪や腹痛、頭痛、喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患、てんかん、夜尿症、よく熱を出す虚弱体質などのほか、不登校のような悩みまで幅広く漢方薬が適用します。さらに、難病疾患で根治となる治療がない場合にも使用します。普段元気なお子さんがたまに調子を崩したような場合は、西洋薬の範疇で十分だと思います。ですが、その症状が繰り返している場合は漢方薬を試してみてもいいかもしれません。

あらゆる病気や悩みに適用する漢方薬ですが、中でも得意にしているのが子どもの夜泣きと発達障害です。前項でお話しした通り、漢方は体のどこに何が足りないかで診断します。例えば発達障害でよく見られる癇癪やパニックなどの症状は、感情の調整作用を行う「心」と情緒のバランスをとる「肝」に気と血が足りないことで起きていると考えられます。そこを漢方薬で補いバランスを整えることで、癇癪やパニックが落ち着いていくと考えられています。

発達障害に漢方薬を使用するメリットは3つあります。

発達障害に漢方を使用するメリット①:0歳から使用できる

まずは0歳から使えるので、西洋薬の適用年齢の前から飲めること

発達障害に漢方を使用するメリット②:副作用が少ない

薬なので副作用はありますが、小児においては頻度も少ないこと。西洋薬で見られる食欲不振やぼうっとしてしまうような副作用は起こりにくいです。

発達障害に漢方を使用するメリット③:頓服で対応することもできる

柔軟な飲み方ができること。例えば眠れない時だけ、癇癪を起こした時だけという具合に頓服で対応することもできます。

睡眠を整えて心と体の土台を安定させる

発達障害を持つ子どもの中には、睡眠障害も同時に抱えていることが多いと言われています。私自身、たくさんの夜泣きの悩みや発達障害児の眠りの問題に対して治療を行ってきましたが、漢方薬は多くの患者さんで効果が見られました。

睡眠は発達の土台となるものですし、睡眠改善によって発達の良い循環にもつながります。具体的に申しますと、眠れるようになった子というのは、心と体の土台が安定するので、ソワソワしなくなって集中力も増します。よく眠れれば日中しっかりと動くことができるようになり、食欲も出て、感覚過敏の子に多い便秘の改善にもつながります。

つまり発達障害によって起こる困りごとが漢方薬で改善するのも、まずはこの睡眠を大事に考えるからです。癇癪やパニックの改善はもちろん、言葉の遅れやなかなか歩かないという子も、睡眠を改善したことで発達が伸びてきたケースを私自身、いくつも経験しました。

家族みんなで漢方薬を飲むメリット

お子さんの困り行動によって家族の流れがうまくいっていない場合、家族全体で治療をするという方法があります。漢方には「母子同服」という考えが古くからあり、私の漢方外来でも「家族療法」としてその考え方を取り入れています。

例えば発達障害のお子さんがいて、親御さんがその子にかかりきりになり、下の子にチックや夜尿などの困った症状が現れるというケースがあるとします。このような場合、つい発達障害をお持ちのお子さんの問題だけに目を向けてしまいがちですが、家族全体で問題を俯瞰してみるのです。

このようなケースだと、だいたい親御さん自身もイライラしたり、心と体の余裕を失っていることも。お子さんと一緒に親御さんの方の治療も始めます。漢方薬は日常生活の不調にもよく効きますので、親御さんも問診を取り困っている不調に対して漢方薬を処方する。同じくチックが見られる下の子にも処方します。そうすることで家族みんながちょっとずつ元気になり、結果として良い循環に入っていくようになるのです。

漢方との上手な付き合い方

漢方の診察は問診が基本になりますが、お子さんの場合は親御さんに話を伺うことが中心になります。1日の生活スケジュールを細かく訊いて、その子に合った処方を見つけていきます。

また、漢方薬も薬ですからもちろん副作用があります。一般的な薬と同様に肝機能障害や漢方薬特有の副作用もありますので、採血などでチェックをします。また漫然と同じ量を続けるのではなく、良くなっていったら必ず減らすことも大切です。必要ではないものを減らしていく。これができるのも漢方薬の良さだと思います。

子どもに漢方薬を飲ませるためのポイント

ポイント①:飲みやすい錠剤を選ぶ

漢方薬は西洋薬に比べると1度に飲む量が多いのと、苦味を感じるものもあるので、飲みにくさを感じる方も多いかもしれません。剤形もいくつかあって、粒子が粗い顆粒から細かい細粒タイプ、錠剤なども選べるので、薬剤師に相談してみてください。

ポイント②:服薬ゼリーやアイスなどに混ぜる

そのままでは飲みにくい漢方薬ですが、基本的には何に混ぜて飲んでも大丈夫です。服薬ゼリーの他にもアイスクリームやヨーグルト、チョコレートシロップなどに混ぜて飲む方もいます。中でも私が一番おすすめしているのがミロやココア。粉薬と一緒に入れてお湯や牛乳を注いで作ると、漢方薬の味が上手にカバーされて飲みやすくなります。

ポイント③:スポイトや哺乳瓶の先に入れて飲ませる

赤ちゃんの場合は、お湯で溶いたものをスポイトや哺乳瓶の先に入れて飲ませたり、小さなねり団子状にしてほっぺの内側にくっつけて、授乳すると楽に飲むことができます。

ポイント④:飲むタイミングは基本的に1日2回でOK

漢方薬を飲むタイミングは、基本的には1日2回で大丈夫です。園や学校で落ち着いて過ごせるように朝飲んで、あとは帰ってきた後に。食前でも食後でも飲めるタイミングで飲んでください。日常生活の中でストレスなく飲むことが大切なので、そこは大らかに考えていただいて構いません。

何に混ぜれば飲みやすいか、どのタイミングだと続けやすいかなど、薬剤師と相談しながら、その子が飲みやすい方法をカスタマイズしてあげてくださいね。

もっと気軽に漢方薬を試してほしい

東洋医学はなじみがない方もたくさんいらっしゃると思いますが、いろいろな治療法の選択肢の一つとして漢方薬がもっと気軽にあげられるといいなと思います。

私が漢方外来を開設した当初から、療育センターの先生の紹介や通っている親御さんからの紹介で多くのお子さんが来院されています。睡眠障害や癇癪がひどいにも関わらず、3、4歳の子に睡眠薬や抗不安薬を出すわけにもいかず、親御さんも困っている。漢方薬が効くかどうかわからないけれども、やれることはやってみよう。そんな状況で駆け込んでくる患者さんも多かったです。

私自身、重い病気を抱える中で漢方に出会い、まだ治療の選択肢があると思えたことが大きな希望になりました。それは発達障害のお子さんを抱える親御さんも同じようなことが言えると思います。「まだできることがある」ということが親子にとって大きな希望になりますし、その希望があるとないとでは、親子の関係性も変わってくるかと思います。

漢方薬で困りごとを改善させることが最終的なゴールではありますが、それ以上に大切なのは親子がゴールに向かって擦り合わせていく過程だと思っています。いつ飲むのが良いか、どうやったら飲みやすいかなど、そのような試行錯誤をしながら家族療法として漢方薬を飲んでみる。そうすると家族の気の流れが良くなります。一度しっかりとした土台が出来れば、また関係が揺らいでも戻るんですよ。そうやって幸せな親子が増えていってほしいと願っています。

鈴村水鳥

suzumura midori

漢方専門医/小児科専門医/アレルギー専門医

医学生の時に難病指定の病気を患ったことをきっかけに、東洋医学に出会う。医師、患者、母の立場から「漢方薬の力を通して、子どもたちが持っている本来の素晴らしい力を引き出したい」「お母さんと子どもたちがホッとする場所を作りたい」と思い、日々診療にあたる。

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