インタビュー #発達障害
公認心理師に聞く!ADHDの困りごとや接し方のコツは?専門機関に相談するメリット
2023年5月22日 14:03
いつも落ち着きがなかったり、突然走り出してヒヤヒヤしたり。そんなお子さんの行動に悩まされている親御さんも多いのではないでしょうか。
最近はよく知られるようになってきた発達障害のひとつADHD(注意欠陥・多動性障害)について、その特性や接し方のコツ、専門機関に相談するメリットなどを公認心理師のしょう先生にお伺いしました。
~目次~
子どものADHD(注意欠陥・多動性障害)とは?
じっとしていることが難しい、衝動的にパッと行動してしまう、気が散りやすく集中力が持続しない。このような症状によって生きづらさや困難を感じる子どもがいます。これはADHD(注意欠陥・多動性障害)と呼ばれる発達障害によって現れる症状です。
ADHDの特性が現れ始める年齢は一人ひとり異なりますが、早い子で2歳くらいから見られるようになります。普段の様子から親御さんが気づいたり、園の先生から指摘を受けて専門機関や医療機関を受診することが多いようです。
ADHDによる困りごとがはっきりと顕在化してくるのは、小学校入学以降になります。本格的な集団行動がスタートしてから本人が困る場面が増えてくると考えられます。
ADHD(注意欠陥・多動性障害)の3つのタイプ
どのような症状が強く出るかによって、ADHDは大きく3つの特性にタイプ分けすることができます。
①「多動性・衝動性」が強く現れるタイプ
②「不注意」が強く現れるタイプ
③「多動性・衝動性」「不注意」混合タイプ
ある特性だけが強く出る子もいれば、すべての特性が見られる子もいます。お子さんがどのタイプかを知ることで大まかな特性の理解にはつながりますが、タイプにとらわれすぎてしまうことにも注意が必要です。まずは目の前のお子さんの困りごとや、実際に現れている症状に目を向けることが大切だと私は考えています。
ADHD(注意欠陥・多動性障害)の子どもの特徴・行動
①「多動性・衝動性」が強いタイプ
じっとしていることが難しく、すぐに動きたくなってしまうのがこのタイプの特徴です。保育園・幼稚園や学校などでも、長時間座っていることが難しく、席から立って歩き出してしまいます。
また衝動性は行動だけではなく、言動にも現れます。思いついたことをすぐに口にしてしまったり、人の話をさえぎって自分の話を始めてしまうので、周りの子とのトラブルになってしまう場合もあります。
②「不注意」が強いタイプ
気が散りやすく集中力が持続しにくいため、勉強や宿題にじっくり取り組むことが難しい、興味関心が薄いことに対して注意が向きにくいという困りごとがあります。また忘れ物や失くし物が多い、片付けが苦手、人の話を聞いていないといったこともよく見られます。
「多動性・衝動性」「不注意」混合タイプは、①と②の両方が困りごととして現れます。
ADHD(注意欠陥・多動性障害)の子どもとの接し方のコツ
①事前に環境を整えてあげる
まずはお子さんの困り行動につながる要因を見つけて、取り除いてあげることをおすすめします。
例えば「不注意タイプ」のお子さんの場合、雑然と物が置いてあったり、周囲から色んな音が聞こえてくる環境では勉強や宿題に集中できません。ここで宿題ができないことを叱っても改善は難しいので、視覚的にも聴覚的にも刺激のない環境を用意してあげるといいでしょう。
学習時に「じっとしていること」が難しくなかなか課題に取り組めない子であれば、宿題の前に思い切り体を動かしたり、椅子をバランスボールに変えて動きの刺激を入れてあげることでうまくいったご家庭もありました。その子の特性に合わせて環境の方を整えてあげるのは大事なポイントです。
②できたことに目を向けて褒めてあげる
お子さんができなかったり失敗したことを叱るのではなく、その途中段階でも「できた」ことを褒めてあげてください。例えば「宿題を終わらせる」ことがゴールだったとしても、その途中には小さなハードルがあります。観ていたテレビを止められたとか、机に向かうことができたとか、そういった小さな「できた」を褒めて、最終的なゴールへのモチベーションにつなげていってあげられるといいですね。
「子どもがADHD(注意欠陥・多動性障害)かも?」と思ったときの相談先
お子さんの困りごとに気付いたり、園や学校の先生から指摘を受けたら、一度以下のような専門機関へご相談してみてください。
・発達障害支援センター
・児童発達支援センター
・精神保健福祉センター
・子育て支援センター
・保健所・保健センター
・児童相談所
などがあります。
上記の専門機関だとちょっとハードルが高いなという方は、まずは「かかりつけの小児科」にご相談してみることもおすすめです。それぞれ、お住まいの都道府県や市区町村と併せて検索してみてください。
専門機関につながることのメリット
専門機関につながることは、お子さんだけではなく親御さんにもメリットがあります。
メリット①必要性に応じて、通所受給者証を受けられる
必要性が認められた児童については、通所受給者証を申請することができます。
通所受給者証を取得することで、児童発達支援や放課後等デイサービスといった児童福祉法に基づいて運営されている障害児通所支援事業者等のサービスを利用することができるようになります。
ただし、申請に必要なものは自治体によって異なる場合があるので、お住まいの市区町村にご確認ください。
メリット②子どもとの関わり方を学ぶことができる
専門機関での相談を通して、お子さんの特性の理解や関わり方などを専門家から学ぶことができます。また最近では、さまざまな専門機関で「ペアレントトレーニング」が実施されています。ペアレントトレーニングとは、親御さんがお子さんとのより良いかかわり方を学びながら、日常の子育ての困りごとを解消したり、お子さんの発達促進や行動改善を目的とした保護者向けのプログラムです。
メリット③子育ての伴走者が得られる
療育などで関わる先生に悩みを聞いてもらったり、一緒にお子さんの成長を発見して喜び合えることは、親御さんにとっても大きな心の支えになると思います。
お子さんの困りごとに目を向けて早めの相談を
親御さんが悩んでいたり、お子さんに困りごとが見られたときは、できるだけ早く専門機関に相談してほしいと思います。ご家庭内だけで解決をしようとして、お子さんへの支援が遅れてしまうと、失敗体験ばかりが積み重なって自己肯定感の低下にもつながりかねません。
また、園では困りが顕在化していなかった(気がつかれていなかった)が、小学校にあがり環境が変わった時に困りごととして現れる場合もあります。今だけではなく、未来の困りごとも想定して早めに支援に繋がれるといいかもしれません。
最後に、親御さんはお子さんの診断の有無にとらわれずに、その子が何に困っているのかに目を向けてあげてください。検査や受診の結果、たとえ診断がつかなかったとしてもお子さんに困りごとがあるのなら、サポートの方法や支援について考えてあげてほしいなと思います。