インタビュー #発達障害

【臨床心理士監修】行動別 発達障害・グレーゾーンの子どもを伸ばす、8つの言葉がけ&対応のコツ

2022年11月5日 9:45

発達障害やグレーゾーンのお子さんがとる特有の行動に、どのように対処したら良いのか困っている親御さんも多いのではないでしょうか。

そのようなお子さんのちょっと困った行動に対する上手な声かけや対処方法を、療育施設や放課後等デイサービスでの勤務経験もある臨床心理士いけやさき先生にお伺いしました。

発達障害の3つの分類について

発達障害は、「自閉スペクトラム症(ASD)」、「注意欠如・多動症(ADHD)」、「学習障害(LD)」の3つに分けることができます。

ASDのお子さんは、独特の強いこだわりを持っていたり、コミュニケーションの面が少し苦手な部分が見られたりします。

ADHDに関しては不注意、多動性、衝動性の3つが大きな特性として挙げられます。未就学児だとじっと座っていられない、動き回ってしまうなどの行動が見られますが、年齢が上がるにつれて落ち着いてくるお子さんもいます。忘れ物や失くし物が多いのもADHDでよく見られる特性ですが、こちらが顕著に現れるのは小学校入学以降。一般的にはADHDは幼児期の確定診断が難しいと言われており、正式な診断は78歳以降になります。

ちなみに読み書き計算などの学習が苦手なLDについても、本格的な勉強が始まる小学校入学以降に判明することが多いといわれています。

ASD〉行動別 言葉がけ&対応のコツ

ASDのお子さんに見られがちな行動を取り上げて、それぞれに対する上手な言葉がけや対応方法をご紹介します。

1.これしか着ない!これは絶対着たくない!

季節や天気を問わず、お気に入りのものを着続けたり、特定の素材を嫌がったり……このような服へのこだわりが強いお子さんには、「今着ている服が)お気に入りだもんね、すごく似合ってるよ! でもこっちの服もかっこいい(かわいい)から着てみたら?」などの言葉かけで、無理強いをさせずに上手に誘導するのがポイントです。

あるいは「ちくちくするから嫌なのかな?」「色が嫌なのかな?」など、お子さんの気持ちを代弁しながら、嫌がる理由を探ってみてもいいかもしれません。

2.靴下を履きたくない! 靴を履きたくない!

ごく近い距離であれば「靴下はいいから靴だけは履こうね」と子どもの気持ちに寄り添ってみるのも一つの方法です。また「どっちが早く履けるか競争しよう」と誘ってみたり、「○○ちゃんの靴下、私が履いちゃおうかな」と言って子どものやる気を引き出したりするのも有効です。

3.モノを並べるのが大好き!

モノを並べるのが好きで、片付けたり少しでも動かすと怒ったりするお子さんに困っている親御さんも多いかと思います。この場合は、「上手に並べてきれいだね」と褒めてあげたり、並べたものを写真に撮って残してあげてから片付けを促すとスムーズに進むかもしれません。

あるいは特性を生かして、テーブルにお皿やカトラリーを並べてもらうなど、上手にお手伝いに誘導しているママもいらっしゃいました。

4.絵の具を触りたくない!

幼稚園や保育園で絵の具を手足に塗って型取りをする時に、絵の具の感触を嫌がって触りたがらないというご相談も多く受けました。この場合、まずはお家でパパやママと一緒に楽しんでみるのもおすすめです。どうしても嫌がる場合はビニール手袋や代用品を使いましょう。決して無理強いはさせずに、少しずつ慣れさせてあげてください。

5.外ではいい子、お家で爆発!

幼稚園や保育園の先生の言うことはよく聞くのに、お家ではやりたい放題で困っている。そんな声もよく聞きます。

外では集団行動が必要になるためこだわりを発揮するのを我慢している分、家で爆発してしまっているのかもしれません。この場合は、外遊びの時間や親御さんとの触れ合いの時間を増やすのもおすすめです。

6.食べ物へのこだわりが激しい

食べ物の好き嫌いやこだわりが強く、困っている親御さんも多いかと思います。

アレルギーでない限りは、食べられる物が多い方がお子さんにとっても良いので、交渉しながら練習をさせてあげましょう。

たとえば白米はふりかけがないと食べられないというお子さんには「半分はふりかけで、半分は白いご飯で頑張ってみよう」と提案してみたり、しばらくは好きなおかずを用意してあげて、白米と一緒に食べてもらうといいかもしれません。

ママパパがちょっと大袈裟に「これ美味しい〜!!」と言いながら食べる、というのもおすすめです。

ADHD〉行動別 言葉がけ&対応のコツ

次にADHDのお子さんに見られがちな行動を取り上げて、それぞれに対する上手な言葉がけや対応方法をご紹介します。

1.忘れ物、失くし物が多い

学校で配られたプリントを失くしたり、持ち物を忘れたりすることは小学校入学以降によく見られるお困り行動です。お家では専用の箱などを用意し、「学校でもらったプリントはこの箱に入れてね」と声かけし、失くさないための仕組みを作ってあげることも大切です。

忘れ物に関してはチェックリストを作ってあげて、目につきやすい場所に付けるなどのひと工夫を。

2.じっとしていられない、動き回ってしまう

座っていなくてはいけない場面で立ち歩いてしまうことなどもADHDの代表的な行動です。ご家庭の場合、食事の時間に顕著に現れます。

座っていられない、姿勢が崩れてしまうという行動はASDのお子さんもよく見られます。分かりやすく伝えると共に環境を整えてあげる工夫も必要です。

たとえば椅子や床の感触が苦手で長時間座っていられないお子さんの場合は、クッションなどで調整してあげる。テーブルが苦手な場合は、床に座って食べるなど、お子さんにも聞きながら座りやすい環境を作ってあげてください。

言葉かけはお子さんの気持ちに寄り添って

未就学児の場合は発達障害の有無に関わらず、大人の話していることやその場のルールの理解が難しい場合があります。話す力も発達段階なので、しっかりと寄り添いながら、お子さんの気持ちを上手に探っていく工夫が必要になります。

すべてのお困り行動に共通して、「どうして○○しないの!?」「ちゃんと○○しなさい!」など一方的に問い詰めたり押し付けたりするような言葉かけや、「パパママがせっかく○○したのに」などの大人都合の言葉かけはできれば避けた方がいいですね。

つい感情的になってしまう気持ちも本当によく分かりますが、できるだけマイルドな言葉かけを心がけてみてください。ただし、飛び出しなどお子さんの身の危険に関わる行動は、しっかりお顔を見て、落ち着いたトーンではっきり話す方が伝わりやすいです。

お子さんのお困り行動で悩んでしまった場合は、一人で抱えずに必ず専門家に相談をすることをおすすめします。色々な人を巻き込んで乗り越えることが、親御さんだけではなくお子さんのためにもなると思います。

いけやさき

ikeya saki

臨床心理士/公認心理師

臨床心理士、公認心理師。心理系大学院卒業後、精神科病院勤務を経て、クリニック、療育施設などの心理職として勤務。現在は「半分フリーランス」として独立し、女性専門のカウンセラー兼webライターとして、臨床心理学をベースにした個別相談やセミナーを行なっている。