インタビュー #発達障害

人一倍敏感な子ども「HSC」…困りごとと周囲の上手な向き合い方とは?【臨床心理士監修】

2023年1月16日 9:48

HSCという特性を持つ子どもがいることをご存知でしょうか? 生まれつき敏感な感覚を持ち、人よりも感受性が鋭すぎることで、時には生きにくさを感じる場合も。

今回は自身もHSPHSCの大人版)を公表されている臨床心理士のいけやさきさんにインタビュー。HSCの特徴や困りごと、周囲の上手な向き合い方などについて自身の体験を交えてお話ししていただきました。

HSCの4つの特徴【DOES】とは?

HSC(Highly Sensitive Child)とは、アメリカの心理学者であるエイレン・N・アーロン博士によって定義された概念で「非常に敏感な子ども」を意味します。

博士によるとDOES(ダズ)」と呼ばれる次の4つの特徴すべてに当てはまり、そのような子どもは5人に1人くらいの割合で存在すると言われています。ちなみに1つでも該当しないものがあれば、HSCではありません。

D:Depth of processing(思考の深さ)
 多様な観点から物事を考える。深く掘り下げて考えられる。

O:Overstimulation(刺激の敏感さ)
小さなことが気になり、常に気が張っている。

E:Emotional response and empathy(共感性の高さ)
他人の感情に影響を受けやすい。感情移入しやすい。

S:Sensitivity to subtleties(感受性の鋭さ)
 五感の神経が過敏で、強い刺激が苦手。環境変化に気付きやすい。

HSCは病気でも発達障害でもない

HSCは病気ではなく生まれ持った性質であり、幼少期の生育環境や体験によって引き起こされるものでもありません。原因の一つとしてよく言われるのが、脳の扁桃体という場所の働きが強すぎるということ。扁桃体は感情を司る部分で、そこが強すぎることで神経が過敏になったり、不安や怖さなどを感じやすくなると言われています。

HSCの一部の特徴は発達障害の子どもにもみられますが、HSCは発達障害ではありません。発達障害である自閉症スペクトラム(ASD)と注意欠陥・多動性障害(ADHD)の場合は、先ほどご紹介した4つの特徴の中の「E:共感性の高さ」に該当しないケースが多く、ここが発達障害とHSCを区別するための一つのポイントにもなります。

HSCの困りごとは周囲に分かりづらい

ここからはHSCの特性によって困りごとが起きやすい場面とそこで見られる様子についていくつかご紹介します。周囲が対応に困ることが多い発達障害に比べて、困りごとが自分の中だけで起こりやすいHSCは、周りの人から分かりにくいという特徴もあります。

集団行動で疲労困憊

HSCの子は集団行動が得意ではありません。ところが苦手なのに人に合わせて頑張ろうと無理をしすぎて疲れて果ててしまうこともあります。

他人の目が気になる

授業中に文字を書いたり計算をしたりする時、先生が背後からその様子を伺うことがあります。この時HSCの子の頭の中は、先生にどう見られているのか、もしかしたら間違っているのではないかと、気が気ではありません。背後の先生を意識するあまり、本領が発揮できないケースも多々あります。

人混みでは頭がパンク寸前

街の雑踏だけではなく、学校や幼稚園、保育園などの人が多い場所は苦手。たくさんの声や情報が耳から流れ込み頭の中で処理が追いつかなくなる場合もあると言われています。

自己紹介では涙も

人前で自己紹介をしたり意見を言うのが苦手な子が多く、過度の緊張で泣いてしまうケースがよく見られます。「泣き虫」というレッテルを貼られてしまったり、本人や周囲が困惑してしまう場合もあります。

他人の怒鳴り声が恐怖

街で誰かが大きな声で怒鳴っていたり、喧嘩をしていると、過剰に驚いてしまうことも。学校や園では、別の子が先生から叱られていることを自分のことのように感じて、辛くなってしまう場合もあります。

刺激の強い遊びは苦手

外遊びやテーマパークなど、一般的に子どもが好きとされている遊びが苦手な子が多いです。ただしHSCの中の一部のタイプには逆に刺激の強い遊びを好む子もいます。好きではあるけれど苦手であることに変わりはないため、テーマパークで絶叫マシンに乗った後にぐったり、ということにも。

周囲の上手な向き合い方や注意点

HSCのお子さんは、その特性を知らない人からすると「内気な子」「泣き虫な子」という印象で片づけられてしまいがち。そうならないためにも、まずは周囲の人にHSCの正しい知識を身につけてもらえればと思います。

その上で目の前のお子さんの思考や好みをしっかりと理解してあげて、苦手にしていることを無理にさせない、できている子と比べないことが大切です。「みんなやっているから、あなたも頑張って」という声かけは、HSCの子には逆効果。そしてどんな結果であれ、努力した過程もしっかり褒めてあげてくださいね。

HSCの子の多くは、色々なことを理解した上で「今は言わない方がいいのではないか」「これを言ったら迷惑をかけるのではないか」と考えます。ですから気を遣うことなく話ができるようにしてあげましょう。そして無理をしすぎているようであれば、大人が声かけをして休息を取らせてあげるのも大切です。

たとえば、何となく登園・登校を渋っている場合は、思い切ってお休みするのもいいかもしれません。無理をさせると、休むことはいけないことなんだという思考が染みついてしまい、それ以降体調が悪くても言い出せなくなる可能性があるからです。

目の前のお子さんに合わせた環境作りを

HSCは周囲に分かりにくい特性でもあります。大人から見て「しっかりしているな」という子が、意外にもHSCだったというケースはよくあることです。よく言えば大人っぽく、裏を返せば子どもらしさが人より早く失われてしまうということ。ですからHSCのお子さんをお持ちのパパママは、しっかりと甘えさせてあげる時間を作れるといいかもしれませんね。

そして繰り返すようですが、目の前のお子さんが何を感じているかをしっかりと見つめて、必要な環境を整えてもらえればと思います。HSCの特性は大人になれば和らいだり楽になるものではなく、大人になってもやはり困りごとは続きます。自分なりの対処法を見つけながら、生きやすい環境を整えていくという点ではHSCも発達障害も同じ。お子さんの場合は、その環境を周囲の大人が用意してあげてほしいと思います。

またHSCは全員ではないですが、遺伝も関係するという見方もあるため、ご両親のどちらかが同じ特性を持つケースもあるかもしれません。お子さん同様に無理をせず、休息をしっかりとっていただけたらいいですね。

いけやさき

ikeya saki

臨床心理士/公認心理師

臨床心理士、公認心理師。心理系大学院卒業後、精神科病院勤務を経て、クリニック、療育施設などの心理職として勤務。現在は「半分フリーランス」として独立し、女性専門のカウンセラー兼webライターとして、臨床心理学をベースにした個別相談やセミナーを行なっている。