インタビュー #習い事

子どもの運動能力を伸ばすには?おすすめの遊び&スポーツ【運動専門家監修】

2023年1月14日 10:06

子どもの運動能力を伸ばすには、どのようなことを心がければよいのでしょうか。とくに、ご自身があまり運動が得意でないと考えていらっしゃる親御さんは、子どもも運動が苦手なのではないかと心配されているかもしれません。

運動神経にまつわる疑問や、運動神経を高める方法などについて、子どもの運動能力開発に取り組む総合キッズスポーツスクール、biima sports(ビーマスポーツ)代表取締役CEOの田村恵彦さんにお話を伺いました。

「運動神経がよい」とはどんな状態?

よくいわれる「運動神経がよい」というのは、たとえば「走って」「切り返して」「戻ってくる」といったような基本的な動作が素早くできる状態のことです。

そして、このような動作が素早くできるかどうかは、「シナプス」と呼ばれる脳内の神経細胞と深く関係しています。脳内には、身体を動かすための神経回路があります。その神経回路は、たくさんの動作を経験することで学習し、円滑に動作ができるようになり、いわゆる運動神経がよいということになります。

運動神経のよさは遺伝する?

結論からいうと、運動神経の良し悪しは遺伝しません。運動神経がよいといわれるようなシナプスの状態は、基本的に子どもの成長過程で形成されるものだからです。ピアノの上手さや字のきれいさが遺伝しないのと同じですね。

しかし実際、運動の得意な親御さんはお子さんも運動神経がよい、ということはよくあります。身近にそのような例を見て、やはり遺伝するのではと疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。

運動が得意でスポーツが好きなお父さんお母さんは、子どもと遊ぶときにも公園などへ行って運動遊びをするのが多い傾向にあります。そのため、自然と子どもの運動経験も多くなり、シナプスの形成が進むのです。反対に、運動が苦手だと感じている親御さんは、おうち遊びなどインドアでの遊びが多い傾向にあると思われます。

さらに、スポーツの経験がある親御さんは、運動の正しいフォームのお手本になることができます。幼児期はスポーツの動作を身につけるために大切なのは模倣することなので、正しい動きを直接見ることができるのはとても効果的です。

運動する機会の多さと、見て模倣できるような運動の質の高さ、この2つが運動能力を開発するための重要なポイントです。運動が得意な親御さんのご家庭では、この2つが満たされている傾向が強いため、遺伝とは関係なく子どもの運動能力が発達しやすいのです。

運動神経をよくするための運動体験とは?

運動神経が一番発達するのは、幼児期である2、3歳くらいから小学校5年生くらいのあいだです。この時期に、特定の競技にしぼらず複合的にいろいろな動作をすると運動能力をつかさどるシナプスが多くでき、運動能力が向上します。

親御さんとしては早く専門競技をやらせたいという気持ちもあるかもしれませんが、未発達な幼児期にできる専門競技の動きは限られています。それよりも、基礎的な動きが幅広くできるよう、幼児期に脳のシナプスをしっかり形成しておくことが大切です。

そうして運動の土台ができていれば、中高生になって専門競技に取り組んだときに、大きく伸びることができると考えられています。実際に、たとえばスペインのレアル・マドリードやドイツのバイエルン・ミュンヘンなどのヨーロッパの強豪サッカークラブでも、チームに所属する子どもたちが小さいあいだは、サッカー以外のメニューがたくさん取り入れられています。

運動神経を高めるおすすめの遊びや習い事とは?

昔は、子どもたちだけで外へ行って、かけっこや木登り、ボール遊びなどをすることができたので、そういった遊びをする中でいろいろな運動能力が自然と鍛えられていました。しかし最近では、安全面などから子どもたちだけで遊びに行くのはなかなか難しい状況にあります。

そこで、お父さんお母さんと外で遊ぶ際には、できるだけいろいろな動きが含まれるよう意識して遊びを設定することをおすすめします。たとえばボール遊びをするにしても、ジャンプしてキャッチしたり、まわって投げたりなど、少しメニューを変えるだけでいろいろな動きができるようになります。また、投げる距離やスピードを変えれば、難易度も調整することができます。

習い事では、バスケットボールや野球、サッカー、テニスなどいろいろな競技を複合的に取り組むことができるところがおすすめです。

子どもの運動能力が気になる親御さんへ

運動会などに参加すると、「うちの子は…」とついほかの子と比較してしまいがちです。しかし、幼児期の成長には個人差があり、子ども一人ひとりで発達のスピードは異なります。ぜひ、比較するのではなく、お子さんのいいところを見てあげてください。

また、運動神経の良し悪しよりももっと大切なのは、お子さんが運動を楽しいと感じてくれることです。お子さんが運動を楽しいと感じてスポーツを好きになってくれれば、自分から運動に取り組むようになります。結果的には、それが運動能力を上げるための一番の近道でもあります。

特に幼児期には、お父さんお母さんと一緒に取り組んだ楽しい運動経験が、スポーツ好きにつながります。ぜひ、お子さんと一緒にスポーツを楽しんでください。

biim sports(ビーマスポーツ) 田村 恵彦

tamura yoshihiko

株式会社 biima 代表取締役 CEO

2016年、株式会社 biima 設立。biima sports は、3歳から11歳を対象年齢とした、21世紀型総合キッズスポーツスクール。早稲田大学のスポーツ科学学術院教授 広瀬統一先生、人間科学学術院教授 前橋明先生と共同開発したプログラムで、子どもたちの運動能力や非認知能力、自己肯定力の向上をサポート。 東京都が主催する2020年世界発信コンペティションサービス部門「奨励賞」など、各方面から評価を受けている。

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