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【小児科医解説】2022年シーズンは大流行?知ってほしいインフルエンザの基礎知識

2022年10月2日 10:00

新型コロナウイルス流行が開始した2020年から2022年にかけて、インフルエンザの流行はほとんどありませんでした。 

その一方で、季節が逆である南半球ではインフルエンザの流行の報告があり、本年はインフルエンザに関しても流行への対策が必要となってきています。

インフルエンザは感染時の治療はもちろん、脳症・肺炎等の重症感染予防のためのワクチン、また日常生活における予防策も重要です。今回はインフルエンザの症状や治療法について解説いたします。

インフルエンザはどのように感染するの?

インフルエンザにはご存知の通り、A型、B型、C型に大別されます。また、A型にもおおきく2つのタイプに分かれます。大きな流行となるのはA型とB型です。このため、1シーズンで3回インフルエンザに流行する場合もあります。A型はヒト同様に動物にも感染し、形を変えながら毎年のように流行しています。

インフルエンザの感染は感染した人のくしゃみ・咳で飛散されたウイルスを含む粒子(飛沫)を吸入することで感染します。このほか、空気感染・ウイルスのついた物・手足にふれて感染する接触感染もあります。潜伏期間はおおよそ23日です。

乳幼児は重症化や合併症を引き起こしやすいインフルエンザ

インフルエンザの主な症状は、突然に起こる38度以上の発熱、咳、鼻水であり、A型の場合には急激に発症します。このほか筋肉痛・関節痛・頭痛、倦怠感などの全身症状も比較的みられます。B型の方が症状は弱めとされており、嘔吐・下痢などの消化器症状をきたす場合があります。 

抵抗力の弱い乳幼児、高齢者は重症化しやすい傾向があります。乳幼児では中耳炎や熱性けいれん、インフルエンザ脳症などの合併症を起こすこともあります。高齢者や基礎疾患がある方では肺炎の合併症を引き起こすことがあります。

インフルエンザは発症後48時間以内の投薬で効果が期待

インフルエンザの診断は、鼻腔粘膜のぬぐい液を採取して抗原検査により診断されます。診断後の主な治療法は抗インフルエンザウイルス薬の投与となります。これまでよく利用されていた内服薬のタミフル、吸入薬リレンザ・イナビル、点滴のラピアクタの抗インフルエンザ薬は、「ノイラミニダーゼ阻害薬」とう分類でありインフルエンザウイルスが体内で増殖するのを抑制する効果があります。ウイルス活性そのものを抑制するものではないため、インフルエンザウイルスが増えてしまってからでは効果が期待できません。このため、発症して48時間以内の投薬が推奨されております。

新インフルエンザ治療薬「ゾフルーザ」

この一方で、2018年にゾフルーザという新薬が販売されました。この特徴は1回の内服で治療が終了すること、前述のノイラミニダーゼ阻害薬とは異なるメカニズムでウイルスを殺傷する作用があります。

「エンドヌクレアーゼ阻害薬」という分類であるゾフルーザの副作用は特筆することはありませんが、薬剤耐性ウイルス出現の可能性が示唆されております。

インフルエンザでは、特に小学校高学年の方から中高生までは、解熱して2日までは異常行動に注意してください。

武井智昭

TOMOAKI TAKEI

高座渋谷つばさクリニック 院長

小児科医・内科医・アレルギー科医。2002年、慶応義塾大学医学部卒業。多くの病院・クリニックで小児科医・内科としての経験を積み、現在は高座渋谷つばさクリニック院長を務める。感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、0歳から100歳まで「1世紀を診療する医師」として地域医療に貢献している。