インタビュー

助産師直伝!「母乳が出にくい」「飲んでくれない……」母乳育児に関するお悩みQ&A

2022年9月26日 11:53

なるべく母乳育児を続けたい、満足するまで飲んでもらいたいと思いながら、なかなかうまくいかないとお悩みの方もいらっしゃることでしょう。

多くのお母さんたちの相談に日々答えている助産師の大滝綾乃さんに、母乳が作られる仕組みからさまざまな母乳に関する疑問やお悩みについて伺いました。

母乳が出る仕組みはどうなってるの?

母乳は栄養があって消化吸収がよく、免疫物質も含まれているほか、母乳をあげることが母と子のスキンシップにもよいなど、さまざまなメリットがあります。しかし出産したらすぐに出るものとは限りません。

母乳の準備は妊娠中に始まります。「エストロゲン」や「プロゲステロン」などの女性ホルモンの働きで、母乳の“工場”である乳管や乳腺組織などが次第に発達し始めます。

基本的に妊娠中は胎盤から出るヒト胎盤性ラクトーゲンというホルモンとドーパミンが、母乳をつくるホルモンである「プロラクチン」を抑制しています。

そして出産によって胎盤が排出されると、プロラクチンの抑制がとれ、個人差はありますが、産後36時間から96時間にかけて母乳分泌が増え、一般的には3日目くらいに体感として「おっぱいが張って」くるようになります。

母乳分泌をスタートさせるきっかけとは?

では、それまでの間、何もしなくてもいいのかというと、実はそうでもないのです。

母乳をつくるプロラクチンがしっかりと分泌されるには、乳頭への刺激がカギになります。赤ちゃんが乳頭を吸ったり、もしうまく吸えなければ搾乳をしたり、あるいはお母さんが自分でマッサージするなど、乳頭への刺激があると、その信号が脳に伝わります。

すると、脳の下垂体の前葉からは母乳をつくるプロラクチンが、そして下垂体の後葉からは母乳をポンプのように押し出す「オキシトシン」というホルモンが分泌されます。

「幸せホルモン」とも呼ばれるオキシトシンは子宮の収縮にもかかわるため、出産後の子宮の回復を助ける働きがあり、これも母乳育児のメリットの一つだといえます。

この時期の乳頭への刺激はとても重要で、それが全くないと12週間ほどでプロラクチンの濃度は妊娠前と同程度に戻ってしまいます。つまり母乳をつくる必要性をキャッチすることで母乳がつくられるというわけです。

効果的に授乳を行うコツとタイミングは?

「乳房が小さいと母乳があまり出ないのでは?」と心配な人もいるでしょう。でも、乳腺組織などに問題がない限り、母乳の量と乳房の形や大きさは関係ありません。

母乳の分泌を増やしていくには、出産後、早い段階から頻繁に授乳を行うことです。それによってプロクラクチンの濃度がより高い状態になります。

母乳育児での授乳の回数は1日に少なくとも8回以上と言われますが、母乳をあげる回数に上限はないので、授乳の間隔や回数にこだわらず、飲ませるタイミングは「赤ちゃんが欲しがる時」につきます。

赤ちゃんは生後3か月頃に昼夜のリズムができてくるといわれています。そのため一定の間は朝も昼もなく授乳が必要な時期となるので、「母子同室」で過ごすとよいでしょう。

赤ちゃんが飲みやすくなるポイントは?

ママにとって苦痛なく授乳できることが大切ですが、授乳のときの体勢がよくないと赤ちゃんも飲みづらいため、適切な姿勢やポイントを確認しましょう。

まず、赤ちゃんの口が大きく開いて、奥深くまでしっかりくわえられる体勢であること。そして、お母さんもリラックスした状態で体をまっすぐに保ちましょう。

肌を触れ合わせるのもすごく大事です。触れることでオキシトシンがアップして、母子ともに安心感に包まれます。

また、昨今は腸内細菌の存在が注目されていますが、生まれてから23歳までに腸内細菌が定着するといわれています。触れあうことで常在細菌が移動し、赤ちゃんの腸内を整えるにも役立ちます。

飲めているかどうかの目安は?

母乳の量が足りているかを確認するには、体重の増え方やおしっこの回数などが判断材料になります。

おしっこが大体16回以上出ていれば、基本的には問題ないことが多いですが、6回以下で色が濃く、においが強いいわゆる濃縮尿の場合には、飲む量が足りていない可能性があります。

飲めない理由はさまざまで、うまく授乳姿勢が取れなかったり、おっぱいが硬くて飲みづらいなどいろいろな問題が考えられます。

飲んでくれないからといって搾乳もしないでいると、体が(もう母乳を作る必要はないのだ)と認識してだんだん母乳がつくられなくなってしまいます。授乳を終わりにする段階でなければ、必要に応じて搾乳しておくことが母乳の分泌を継続する上でも必要です。

また、しっかり飲めていないと乳腺の詰まりや張り、乳腺炎につながることもありますので、あわせて注意しましょう。

母乳が出にくくなる理由は?

赤ちゃんに母乳をしっかり飲んでもらいたいと思うあまり、ついがんばりすぎてしまうのも無理ありません。

夜間はプロラクチンが多くつくられるため、母乳育児を続けるためには夜の授乳も重要ですが、疲れや睡眠不足、冷え、貧血など、お母さんの体調がすぐれないと出るべきホルモンも出ず、さらに母乳も出にくくなってしまうことがあります。そこで必要に応じて休息をとるのも大切です。

また、医学的に必要がない場合は、母乳以外のものを与えないようにしましょう。胃の小さな赤ちゃんに水分や糖水などをあげることで母乳を飲む量が減ってしまうため、のどが乾いている状態なら授乳を行うのがよいでしょう。

一人で悩んでしまったら?

母乳育児にはいろんな要因が絡んでいます。うまくいかない理由はそれぞれに異なりますし、正解はひとつではありません。1人で悩まず、相談できる場所や人を見つけるのは大事なことです。

さまざまな事情でおっぱいをあげるのが辛い状況なら、無理をする必要はないと私は思います。ただしミルクと混合にしたいというときなどは、ほかに解決策がみつかる場合もあるため、自己判断する前にぜひ身近な専門家に相談してみてください。

母乳育児のメリットはたくさんありますが、「完全母乳」が素晴らしいことだとされ、まるで神話のようにとらえられている場合があります。そうした周りの決めつけや思い込みで子育てが辛くなってしまうよりも、周りと比べずママと赤ちゃんが一番幸せだと思う方法を相談しながら選択していくのが一番かなと思います。

大滝 綾乃

otaki ayano

助産師

助産院「太陽と月」運営(静岡市)。米国公認IPHI乳幼児睡眠コンサルタント、おむつなし育児アドバイザー、排便&便秘アドバイザー。Onlineサロン「おかえり」、【子育てママ専用】本当の幸せをみつける講座、YouTube「助産師ayanoのママ今チャンネル」などで活動。