インタビュー

うちの子、グレーゾーンかも……? 臨床心理士が教える発達障害グレーゾーンの子どもの向き合い方

2022年9月5日 11:32

目次

    日常の中でうまくコミュニケーションがとれなかったり、1つのことに妙にこだわったり……。グレーゾーンという単語を聞いたことがあるけれど、「うちの子はそれなのでは?」と不安になったことはあるでしょうか。

    発達障害のグレーゾーンとは一体どのような状態のことなのか、どうとらえたらよいかなど、臨床心理士の佐瀬りささんに、グレーゾーンの子どもとの向き合い方について伺いました。

    発達障害のグレーゾーンとは?

    メンタルヘルスの分野で使われる「グレーゾーン」とは、発達障害の特性と重なるものの、その基準にすべて当てはまるわけではないため、「発達障害とは診断されない」状態です。

    発達障害は、生まれつきの脳の働き方によって起こるものとされています。人とのコミュニケーションがうまくとれず、強いこだわりや反復行動がみられる「自閉スペクトラム症(ASD)」、「注意欠如・多動症(ADHD)」、「学習障害(LD)」の3つに大きく分けられ、それぞれに診断基準があります。

    発達障害と診断された場合は、医療機関や療育センターにかかって、しっかりと支援を受けることが必要です。しかし「グレーゾーン」と考えられるなら、それは病名ではありません。

    たとえば、「なかなか人と目を合わせることはできないけれど、他のことはできている」などの場合、専門家の目からみると「発達障害ではない」と考えます。

    ところが親の側は、「グレーゾーン」といわれただけで、「ほぼ発達障害」のようにとらえてしまうことがあり、そこに若干の温度差があります。我が子のことであれば不安に思うのも無理もありませんが、正しく知られていないのが実情です。

    グレーゾーンといわれたら

    もし「グレーゾーンではないか」と言われたら、子どもの「何を」「どのように」判断してそう言ったのかを尋ねてみましょう。たとえば「多動症」の場合でも、ほかの子に比べてよく立ち歩くというだけで、グレーゾーンだと言われている場合もあります。 

    また、専門家の診断でグレーゾーンだといわれた場合でも、そこで必要な対応は人それぞれです。

    グレーゾーンとは先にも述べた通り、正式な病名ではありません。ですから、診断名がついた子どもと、そうではない子どもは分けて考えることを勧めています。

    さらにいえば、発達障害、グレーゾーン、正常の3つに分けるものでもありません。

    子どもの発達や特徴を色にたとえて、何の色もついていない「真っ白」の状態などはなく、何の特徴もない子どもなんて1人もいないのです。

    子どもの課題や特性はみんな違う

    「発達」とは一体どのようなものでしょうか。

    成長の段階で、子どもには超えるべき「ハードル」が次々と現れてきます。子どもはそれらを1つひとつ飛び越えながら成長していきます。 

    国が設定した一般的な教育カリキュラムとは、成長段階に応じてハードルの順番や高さなどを想定しています。そして、3才ならこれくらい、1年生になったらこれくらいの課題があるとして、「こういう方法で飛び越えさせましょう」と決めています。

    ところがグレーゾーンの子どもの場合、そのハードル、つまり課題が出てくる順番や高さが違うだけなのです。 

    このハードルを「洋服のサイズ」にたとえることもできるでしょう。市販されている洋服は、「○歳なら○㎝位」とする目安に基づいて作られています。ただし、それはあくまでも平均であって、すべての子どもにぴったり合うわけではありません。

    グレーゾーンの子どもは、一般的なサイズに照らしてみると袖が長すぎたり、丈が長すぎたりするだけのことです。ですから体に合わせて調整する必要がある、そんなふうに考えるとよいでしょう。 

    サポートがないために二次トラブルになることも

    現状の学校教育では、先生1人につき35人もの子どもをみていますし、中にはうまく飛び越えられない場合もあるでしょう。すると、「ああ、飛び越えられなかった」と自信を失ってしまうこともあります。

    飛び越えるには無理な高さであったり、きちんとやり方を教えてもらえなければ、全員がすんなりと達成できるわけではありません。サポートがないからできないだけなのに、努力が足りないなどと批判されるのはおかしいのです。とくにグレーゾーンの場合は、そこから新たな精神的なダメージやトラブルにつながるなど、二次的な問題を抱えてしまうこともあり、それでは本末転倒です。

    大切なのは子どもをよく観察すること

    子どもが乗り越えるべき課題がみつかったら、子どもと一緒に考え、うまく達成できるようにサポートしていくことが大切です。

    そこで大事なのは子どもをよく観察していくことです。

    例えば食事中に立ち歩きをしてしまうなら、まずは客観的に事実を見極めましょう。どんな状況でそうなるのかをよく見て、対処法を考えていきます。そこで注意したいのは「できないことはダメだ」などと主観的な評価や判断を入れないことです。

    また、最近多いのは、親のほうが食事中にスマホばかり見ていたりすることがあります。それはなるべく避け、子どもと向かい合う時間をきちんともつことも大切です。 

    困ったときの相談窓口は

    困ったとき、ついネットやSNSを頼ってしまうこともあるでしょう。

    でも、子どもによって対処法は違うものです。なるべく家庭内で抱え込まず、専門家に相談に行くことをお勧めします。

    最初は幼稚園(保育園)、あるいは学校の先生に相談をしてみることです。今はほぼ全校にスクールカウンセラーが配置されていますから、そうした人に話を聞いてみるとよいでしょう。

    しかし、そこで合わないと感じたり、別の意見を聞いてみたい場合には、自治体の学校カウンセラーや民間の機関に話を聞くという方法もあります。また、同じ悩みを持つ保護者の方が見つかれば、参考になることも多いはずです。

    子どもの安全基地になるために

    成長の過程はそれぞれに違います。ですから「発達は誰だってグレー」なのです。大人も含め、人は誰でもそうですし、この子のグレーはどんな色だろう、という目で見ることです。

    できることなら、お父さん、お母さんは子どもにとって「安全基地」であってほしいのです。そばにいれば安心できて、学校で嫌なことがあってもなんとかなる、子どもがそんなふうに思える場所です。

    そのためには親も安全基地を持つことです。困ったら話を聞いてもらえる、わかってもらえると思えるような居場所をぜひ見つけて下さい。

    たとえ子どもがグレーゾーンといわれても、それも成長の一段階です。まずはありのままを受け止めて、1人ひとりの特性に合わせて「じゃあこうしよう」と柔軟に考えていきましょう。

    佐瀬りさ

    sase risa

    臨床心理士・公認心理師

    未病の方のためのカウンセリングルーム こころサロン創 代表。横浜市の精神科クリニックに常勤心理士として勤務した後、横浜市スクールカウンセラー、神奈川県看護学校スクールカウンセラー等を含め、現在まで20年以上の臨床経験をもつ。3人の子どもの母。