インタビュー

母乳はいつまであげる?どう終わらせる?「断乳」「卒乳」の注意点を助産師が解説

2022年7月21日 10:00

目次

    子どもの成長に伴い、母乳から離乳食に移行する道のりは千差万別。いつ、どのような形で、何に注意して行うべきなのでしょうか。

    日々さまざまな育児の悩み相談に対応している助産師さきさんに母乳育児を終えるにあたっての心構えなどを伺いました。

    一般的な「卒乳」と「断乳」の違い

    母乳育児を終えることを「卒乳」「断乳」などといいますが、一般的には子どもが自ら飲みたがらなくなるのが「卒乳」、お母さんが終わりにしようと決めるのが「断乳」とされています。

    しかし、育児に関する専門書でも定義はさまざまで、母乳育児を終えることすべてを「卒乳」と呼ぶ場合もあります。その場合、子どもが決める場合を「自然卒乳」、お母さんが決める場合を「計画的卒乳」と呼びます。

    母乳育児を終える心構え

    「卒乳」「断乳」をどう進めるかの前に、母乳育児にまつわる誤解を解消しておきましょう。

    その1つは、産後数日ほどに出る「初乳」にのみ、免疫成分が含まれているというものです。初乳はたしかに通常の母乳(成乳)よりも免疫成分が多いのですが、母乳にも常に免疫成分が含まれています。そのため、母乳育児を長く続けることにやはり意味はあるといえます。

    だからといって母乳育児を早く終えるのがいけないわけではありません。さまざまな理由でお母さんにとって授乳が負担になっていたとしたら、お母さんの幸福度は当然下がってしまい、子どもに対してもよくない影響を与えてしまいます。

    「卒乳」「断乳」の形は人それぞれ。焦ることはない

    過去には、母乳育児を信奉する「母乳神話」ともいうべき風潮がありました。でも、授乳も育児の一部に過ぎないのです。

    お母さん側がまわりに振り回されることはありませんし、「断乳」のタイミングがいつになるかといえば、「お母さんが本当に決意した時」だといえます。

    実際にやってみて、やはり「寝かしつけに授乳が必要」と再び授乳に戻る人もいます。断乳までの道のりは本当に人それぞれです。

    助産師によるケアは必要?

    多くの人が迷うのが、「助産師さんのケアは必要か?」という点です。専門家に乳汁(母乳)を絞りきってもらわないと乳がんになったり、石灰化したりする、と耳にすることがありますが、これはまったく根拠のないことです。

    とくに問題を感じなければ、あえて専門家のケアを受けなければいけないということはありません。ただし、授乳の回数や乳汁の量が多い人が急に授乳をやめると、乳汁が溜まって乳腺炎に至る場合があります。

    ですから不安を感じる場合や、ケアが必要だと思ったら、もちろん専門家に相談するようにしましょう。

    母乳がつくられなくなるしくみ

    断乳の道のりとして、体内で乳汁をつくる働きを抑えていく必要があります。

    そもそも乳汁は、授乳の量や回数などに応じてコントロールされています。そして、授乳の頻度が減っていくと、体がもう作らなくていいのだと判断してつくる量を抑えていきます。

    そこで、断乳を決めた場合は、乳汁をつくる必要がないことを体に伝えるために、一定期間、乳房内に溜め続けることがポイントです。期間の判断は助産師や専門書によって幅がありますが、一般的に乳房に張りを感じる状態から半日以上溜めたままにすると、乳汁をつくる作用にブレーキがかかり始めるといわれています。

    具体的には24時間以上溜めておき、胸が張ってつらいようなら一度搾乳し、また24時間以上を目安にまた絞るというのを繰り返します。すると溜まる速度が遅くなってくるはずですから、さらに期間を空けていくのです。

    ちなみに、助産師に搾乳してもらっても、それで完全に出なくなるわけではありません。数ヵ月経って搾乳しても、まだ母乳がにじむというのもよくあることです。また、残った乳汁は基本的に体内に再吸収されてしまいます。

    子ども側の「卒乳」にも個人差がある

    子どもの側で卒乳していく場合にも、いろいろなパターンがあります。

    最もスムーズなのは、離乳食の開始とともに母乳を飲む量が減って、少しずつ止めていくパターンですが、このまま終わっていくのかなとと思ったら、なぜか突然母乳への執着が戻り、回数が増えるという場合もあります。また、何の前兆もなくある日パタッと「もう飲まない」となる場合もあります。どのような状況になるかは子どもによりさまざまです。

    一方で、多くの子どもが卒乳の時期を迎える24才頃に、子どもの体にはある変化があります。

    母乳には乳糖が含まれており、乳児は乳糖を分解する酵素を分泌することで消化吸収をしています。ところが2歳から4歳ぐらいになると、乳糖に対する分解酵素の合成がだんだんと低下してくるのです。

    大人でも、体質的に牛乳を飲むとお腹がゴロゴロするという人がいます。これは乳糖分解酵素が少ないことで起こるのですが、子どもの体におこる変化と卒乳の時期が重なるのは、両者につながりがあるからだと考える専門家もいます。

    子どもの“乳離れ”をどう受け止める?

    母乳育児の終わりがどのような道筋になるかは人それぞれです。100人のお母さんと子供がいたら100通りのストーリーがあるといえます。

    それがどのような終わり方になったとしても、振り返った時によかったと思えるような“おっぱい”の卒業になればよいのではないでしょうか。

    「計画的断乳」を決めたあるお母さんは、最後の授乳を2時間かけて行ったといいます。「今まで飲んでくれてありがとう。お母さん幸せだったよ」と話しかけながら、ゆっくり過ごしたのだそうです。それはとても幸せな時間だったことでしょう。

    子どもの数も少ない昨今ですから、授乳の記念に「授乳フォト」や「母乳ジュエリー」を残す人もいます。母乳育児の終わりをひとつの節目として、思い出を残しておくのも1つの方法かもしれません。

    助産師さき

    jyosanshi saki

    助産師

    助産院Hug代表。看護師・助産師。離乳食アドバイザー、幼児食アドバイザー、CISA認定小児スリープコンサルタント、IPHI米国認定妊婦と子どもの睡眠コンサルタント。各種SNS等で発信を続け、フォロワー数6.9万人の「インスタ子育て相談室」では出産準備、授乳、離乳食、寝かしつけなど、さまざまな育児の悩み相談に答えている。自身も2児の母でもある。