インタビュー

【漫画】夜、気づいたら急な発熱!救急外来に連れていくべき?小児科専門医が解説

2022年7月26日 10:00

昼間では元気だったのに、夜になって38.5℃もの発熱がわかったとき、急いで救急外来に連れていくべきか、それとも自宅での対処でいいものなのかと判断に悩む場合も多いことでしょう。

子どもの体温が上がる理由や受診の目安などについて、小児科専門医・医学博士の工藤紀子氏に伺いました。

病気による「発熱」と「高体温」の違いとは

夜、風呂に入る時や寝ようとする時になって、子どもの熱の高さに急に気づく場合があります。体温が高くなる場合には、2種類の理由が考えられます。

1つ目は風邪などによる「発熱」で、体温を上げることで免疫力を高め、病原体に対抗しようとしている状態です。

もう1つが「高体温」の場合です。子どもは外部の影響を受けやすいため、着込みすぎた場合や、乳幼児だと激しく泣いたり、授乳後などに体温が上がったりします。

これらの違いは、脳の体温調節上のセットポイントの違いからきています。

発熱の場合は、脳内で調整して「熱を出している」のであり、反対に高体温は、設定自体は平熱のままで、おもに外部の影響によって「体温が高くなっている」のです。

見極めるには、手足などの末梢を触ってみることです。発熱が起きると悪寒や震えが起こることもありますが、手足は冷たい状態です。高体温の場合は熱を逃がそうとして汗をかき、手足は温かいままです。

風邪などの可能性が高い! 受診するかどうかのポイントは?

急な発熱の場合には、救急外来を受診すべきかどうかの目安を知っておきたいものです。

熱があっても元気で水分も取れ、すんなり眠れているなら、急いで受診する必要はないでしょう。

一方、すぐに救急外来に行くべきなのは、生後3か月未満の乳幼児で38度以上の熱がある場合。これは重症な感染症にかかっている可能性があります。本来、生後6か月ぐらいまでの幼児は、お母さんからの移行免疫があるので発熱は起こりにくいものなのです。

そのほか月齢にかかわらずぐったりとして顔色が悪い、元気がない、水分もとれず呼びかけてもぼうっとしているような場合は、救急でも受診しましょう。また、水分をとらせても吐いてしまったり、嘔吐物が緑色になるほど吐き続けたりしている場合、おしっこが半日近く出ていない、けいれんがみられるという場合も急いで受診してください。

また、咳が続いたり、熱が5日以上続いていたり、食欲はあってもどこか元気がないような場合などは、日中の外来でよいので受診して相談しましょう。

自宅での処置で注意したいこと

自宅で過ごす場合、水分を適度にとり、なるべく1人にしないことです。

体を冷やすと気持ちがよいと感じるなら、脇の下を冷やしたり、氷枕を使ったりしましょう。ただし子どもが嫌がっているのに無理に冷やす必要はありません。どうすれば子どもが心地よく過ごせるかを重視してあげましょう。

また、熱があるからといって解熱剤を使う必要はありませんが、眠いのにぐずぐずして寝つけない、機嫌が悪い、ぐったりしているという時には、熱を下げる道具として解熱剤をうまく活用しましょう。それで風邪が治りにくくなることはありません。

成長途上にある子どもにとって、「熱は出すもの」です。

いろんな敵に対する免疫を作っていく段階にあるのですから、急な発熱でもあわてずに、見るべきところを見極めて子どもが過ごしやすくなるように心がけましょう。

工藤紀子

kudo noriko

小児科専門医

順天堂大学医学部卒業、同大学大学院小児科思春期科博士課程修了。栄養と子どもの発達に関連する研究で博士号を取得。日本小児科学会認定小児科専門医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/保育園、幼稚園、小中学校の嘱託医を務める/現在2児の母。クリニックにて年間のべ1万人の子どもを診察しながら、子育て中の家族に向けて育児のアドバイスを行っている。