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子どもが夜中に突然嘔吐…保護者はどのように対応すべき?【専門医が解説】

2022年2月26日 5:00

子どもが急に嘔吐する原因と対処法

嘔吐の原因は、ノロウイルス・ロタウイルスなどの急性胃腸炎が多くを占めています。吐いた際には、縦抱きにして静かに背中をさすり、嘔吐物の誤嚥を防ぐことが重要です。無理して嘔吐をさせる(指をのどに入れる)、体を揺らす等はしないようにしましょう。

 

嘔吐がある程度落ち着いてきたら、嘔吐物が付着した衣服はすみやかに着替えて、消毒をしてください。ウイルス性胃腸炎が原因の場合、嘔吐物に相当な量のウイルスがあり、他の家族に容易に感染するリスクがあるため、処理をする際には、手袋やビニール袋、マスクを着用して対処してください。

 

また、同時に口の周りについた物もきれいにしてあげてください。消毒としては、次亜塩素酸ナトリウム(ハイターなど)が有効です。0.1%(500mlのペットボトル1本の水に対し、キャップ゚2杯程度)に薄めて、嘔吐がかかった場所・トイレ・てすり・部屋などドアノブなど、人が触れる場所を消毒すると良いでしょう。

 

嘔吐の頻度が落ち着いたら、小さじ1杯の水分を少量ずつ与えて、5~10分ごとに増量をしてください。水分の他にも、消化吸収の良いうどん、おかゆ、野菜スープ、みそ汁などで、塩分を取ってみましょう。

嘔吐を伴う病気のなかで、緊急性が高い疾患

腹痛が持続して血便を伴う場合には腸重積症、頻度はまれですが、発熱・頭痛を伴い、呼びかけでの反応が鈍い場合には髄膜炎、このほかにも心筋炎・低血糖・腸閉塞など緊急性を要する疾患の可能性も念頭に置く必要があります。

 

観察のポイントは、「ぐったりしているか」「活気があるか」です。ぐったりしているときには、脳への糖分・酸素が十分に運ばれていない可能性が高く、緊急対応の必要がある疾患にかかっている恐れがあります。

 

盲点になるのが陰部の症状であり、男児であれば精巣捻転(精巣がねじれて締め付けられる)疾患もあり得ます。嘔吐とともに、下腹部の激痛が急激にみられ、陰嚢の片方が赤紫色に腫れていることがポイントとなっています。

 

早急にねじれている部分をもとに戻さなければ、精巣の機能が障害を受ける可能性がありますので要注意です。

夜中であっても、すぐに受診すべき場合とは?

嘔吐に伴う症状として、激しい腹痛、嘔吐物に血が混じっている、血便、嘔吐物の色が抹茶のような緑色である(胆汁性嘔吐)場合には、速やかに受診をしてください。

 

また、全身の状態として、意識がおかしい(呼びかけへの反応が弱い)、顔色が悪い、眠ってばかりいるという状態も危険なサインです。

 

6ヵ月以下のお子さんの嘔吐であれば、緊急性が高くなるため、夜中であっても速やかに、小児科救急に対応している医療機関を受診してください。

 

これに対して、発熱があるものの、前述のような緊急性を要する状態がみられず、活気がある場合、遊ぶ余力がある、機嫌が良い場合には、翌日の受診で差し支えはありません。

 

お子さんの嘔吐には、夕食で脂っこいものをお腹いっぱい食べたり、炭酸飲料を多く飲んだり、食後に体を使う遊びを長時間したり、ということが原因になる場合もあります。その場合、食物の痛快による腹圧の一時的な上昇が原因である可能性があるため、こちらも経過をみて差し支えありません。

 

武井智昭

TOMOAKI TAKEI

高座渋谷つばさクリニック 院長

小児科医・内科医・アレルギー科医。2002年、慶応義塾大学医学部卒業。多くの病院・クリニックで小児科医・内科としての経験を積み、現在は高座渋谷つばさクリニック院長を務める。感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、0歳から100歳まで「1世紀を診療する医師」として地域医療に貢献している。