インタビュー #教育
放課後等デイサービスとは?支援内容や利用方法、事業所選びのポイント
2023年6月22日 10:30
小学校入学後、親御さんのちょっとした悩みの種になるのが、「放課後をどう過ごすのか」問題。それは発達に不安を抱えたり障害をもつお子さんの親御さんでも例外ではありません。
その役目を担ってくれるのが放課後等デイサービスという通所支援サービスです。社会生活に困難を抱える子が自立を目指すためのトレーニングも行ってくれるこのサービスについて、株式会社アイラ代表の遠藤千尋さんにお話を伺いました。
~目次~
放課後等デイサービスとは
放課後等デイサービスとは、発達過程において課題を持っている子どもたちが学校終了後や長期休みに通って、将来的に就職や自立をするために社会適応力をトレーニングする場所です。
また発達に問題を抱えるお子さんの子育て相談や親御さんの働く時間を確保するという保護者支援の側面もあります。
どんな先生に見てもらえるの?
放課後等デイサービスには、保育士や児童指導員、教員、社会福祉士、精神保険福祉士などの有資格者が勤務しています。事業所によっては理学療法士、作業療法士、言語聴覚士を入れているところもあります。
利用するのに障害者手帳は必要?
放課後等デイサービスは小学校1年生から高校3年生まで利用できます。いわゆる「発達グレーゾーン」といわれるお子さんから、医療的なケアが必要なお子さんまで幅広く対象になっており、療育手帳や障害者手帳は必要ありませんが、お住まいの自治体で障害児通所受給者証を取る必要があります。
放課後等デイサービスの利用料金や利用回数
利用料金はどのくらい?
放課後等デイサービスの利用料金は、基本的には公費で賄われており、自己負担額は1割です。世帯の所得によって異なり、以下のような3つに分類できます。
【世帯所得と月額上限】
※月の利用回数によって金額は若干異なります。
非課税世帯 | 0円 |
世帯所得 年収約890万円まで | 4,600円 |
世帯所得 年収約890万円以上 | 37,200円 |
ちなみにおやつ代や教材費、行事費や外出にかかった実費などが別途かかる場合もあります。
利用回数はどうやって決まるの?
自治体で障害児通所受給者証を申請する際に審査があり、そこで月の利用回数の上限が決まります。この回数は障害の状態だけではなく、ご家庭の状況や養育環境なども加味して決定されます。決められた回数以内であれば、複数の施設に通うことも可能です。例えば施設Aと施設Bの2か所と契約し、それぞれ週に2回ずつ通うということもできます。
放課後等デイサービスの利用までの流れ
ここではグレーゾーンを含めた発達障害のお子さんを例にとってご紹介します。
STEP1:医師に診断してもらう
乳幼児検査や就学時健診などで発達に指摘を受けた場合は、児童発達支援サービスや発達外来などに相談に行き、医師による診断を受けます。
STEP2:障害児通所受給者証を申請
医師による診断と必要書類を揃えて、お住まいの自治体に障害児通所受給者証を申請してください。障害児通所受給者証とは放課後等デイサービスなどの障害児通所支援を利用するために必要な証明書になります。
STEP3:事業所探しと見学
ご希望の事業所に空き状況を確認して実際に見学を行います。
STEP4:事業所と直接契約
事業所が決まったら直接契約を結びます。児童発達支援管理責任者という専任のスタッフが支援の計画を立てて実利用が開始します。
放課後等デイサービスの1日の流れと活動について
放課後等デイサービスは、支援が必要な子どもたちの将来的な就職と自立を目指しています。そのために必要な日常生活スキルや集団の中での協調性などを身につけることを狙いにした活動プログラムが用意されています。
活動内容は事業所によって異なりますが、ここでは一般的な1日の流れをご紹介します。
(1)お迎え
学校がある日は下校時刻に合わせて事業者のスタッフが学校までお迎えに行きます。学校が休みの場合は、午前中にご自宅に迎えに行きます。
(2)宿題・学習
施設に到着後は、学校で出された宿題などに取り組みます。お子さんが自分で計画を立てて取り組めるように、気持ちを確認しながら進めていきます。
(3)おやつ
宿題が終わった子からおやつを食べて、下校時間が遅い高学年の子が揃うのを待ちます。
(4)メインプログラム
全学年が揃ったら事前に決められたプログラムを行います。例えば目を使う運動や感覚遊び、買い物体験などの社会性をトレーニングする日もあります。
(5)自由遊び
学校を含め1日頑張った子どもたちに自由に発散してもらえる時間をとります。
(6)帰りの会・送り
遊んだおもちゃなどを片付けて帰りの会を行います。その後は各ご家庭へ送り届けると、帰宅時間は大体18時頃になります。休日に関しては16〜17時にはお送りします。
(7)休日の活動
午前中は宿題や学習、机の上でできる活動を個々で行います。休みの日はお弁当を持参し、みんなで食べます。午後は公園遊びや農業体験、動物園や博物館などの公共施設へ出かけたり、演劇鑑賞などの文化的なプログラムを取り入れることもあります。
放課後等デイサービス選びのポイント
保育園と同じように放課後等デイサービスも運動に力を入れているところ、学習を重視しているところなど事業者によって特色があります。
実際に見学へ行き、直接話を聞いたり活動の様子を確かめて、お子さんに合った施設を選んであげてください。
ポイント①:安心・安全に過ごせるかどうか
自治体によっては障害の種類によって事業者を分類したり、特定の障害を専門にすることを認めているところもあります。お子さんがもつ障害を考慮し、安心・安全に過ごすことができる事業者を選んであげてください。
ポイント②:送迎エリア内かどうか
放課後等デイサービスは送迎可能エリアが設けられており、お住まいのエリア内の事業者から選ぶことが基本になります。
ポイント③:個別の提案をしてくれるか
職員と話をした時に、お子さんの障害や特性に合わせた個別の支援計画を提案してくれるかどうかも大切なポイントです。一方的なサービス説明だけではなく、お子さんについてしっかりと話を聞いてくれる事業者を選んでいただければと思います。
早めから動くのがカギ!
小学校入学のタイミングで放課後等デイサービスに入りたいとお考えの親御さんも多いと思います。多くの事業者が毎日10名程度の定員で運営されており、4月のタイミングでほぼ満員になります。
もし未就学児の親御さんで利用を考えている場合は、できるだけ早めに見学をしておいて「空きが出たら来年度から使いたい」という要望を伝えておくといいかもしれません。ただし未就学児の場合は、申し込みが始まる前の利用枠確保はできませんので、先に「今すぐ使いたい」という方が出てきた場合はそちらが優先になりますのでご注意ください。
ちなみに確実に入所する手段としては、新規の放課後等デイサービスを狙うのもおすすめです。中にはオープニングスタッフ求人をチェックして、早めに連絡をされている親御さんもいらっしゃいます。お子さんの募集よりも職員募集の方が先に出るので、いち早く情報を掴む方法としてはとても良いと思います。
子どもたちの第3の居場所として
放課後等デイサービスは子どもたちにとって、ご家庭、学校の次に存在する第3の居場所。普段は大きな集団社会の中で抑えている気持ちを発散できる場所でもあります。ですから何よりも成功体験や自信をつけてもらえることを第一に子どもたちと関わっています。
放課後等デイサービスは子どもの発達に関する地域の専門家です。親御さんにとっても子どもたちにとっても「地域にこんな頼れる味方がいるんだ」と安心感を感じてもらえたらと思っています。