インタビュー #睡眠

医師&睡眠の専門家直伝!赤ちゃんがぐっすり寝る“ねんね”のコツ

2023年2月16日 10:00

赤ちゃんがなかなか寝てくれなくて大変な思いをしたことのあるお母さんお父さんは多いのではないでしょうか。

そこで今回、医師で睡眠専門家であり、ご自身も3児のお母さんでいらっしゃる森田麻里子さんにお話を伺い、赤ちゃんの寝かしつけのコツや注意点を教えていただきました。

赤ちゃんの睡眠サイクルと睡眠時間

眠りが浅くなったり深くなったりする睡眠サイクルは、大人では90分前後ですが、赤ちゃんはこれより短く、45分から60分程度であるといわれています。

また赤ちゃんに推奨される睡眠時間は
・生後0か月~3か月…14時間~17時間
・生後4か月~11か月…12時間~15時間

です。お昼寝と夜の睡眠を合わせて、このくらい寝かせられるようにしましょう。

赤ちゃんがなかなか寝てくれない原因

赤ちゃんが夜なかなか寝てくれない原因には、

①寝る時間が決まっていなかったり遅かったり、生活リズムが整っていない
②暑すぎたり明るすぎたりするなど、寝室の環境が整っていない
③授乳や抱っこで寝かしつけている

などが挙げられます。

一方、昼寝の時間が長すぎるのも夜に寝られなくなる原因だと思われがちですが、実は昼寝のし過ぎで夜寝られなくなる赤ちゃんはそれほど多くありません。むしろ、多いのはお昼寝が足りずに寝られなくなる場合です。赤ちゃんは眠いと不機嫌になって大泣きします。大泣きすると興奮して、余計に眠ることができません。最終的には電池が切れたように寝てしまうのですが、これは親御さんにとってもストレスのある寝かたでしょう。またこのように寝てしまうと睡眠が浅く、夜中に起きやすくなってしまいます。そうして睡眠不足になるとまた大泣きする、という悪循環に陥ってしまいます。

赤ちゃんをスムーズに寝かしつける3つのコツ

それでは、赤ちゃんが寝てくれない原因を踏まえて、寝かしつけのコツをご紹介しましょう。

①生活のリズムを整える

朝起きる時間と夜寝る時間を決めておきましょう。夜が遅くて睡眠不足の赤ちゃんが多い傾向にあるため、夜の睡眠時間は10時間から12時間程度、しっかり確保できるようにします。時間の守り方はそれほど神経質になる必要はなく、たとえば7時に起きると決めたら、6時半から7時半のあいだに起きるくらいのアバウトさでかまいません。

②寝室の環境を整える

暗くて静かな寝室を用意し、室温は大人の体感で少し涼しいくらいに調節します。冬は18度から20度くらい、夏は25度から27度くらいが適温です。冬の暖房は空気が乾燥するので加湿器を、夏には除湿を追加するとよいでしょう。

③寝かしつけの方法を変えてみる

授乳や抱っこで寝かしてつけていても、そのまま赤ちゃんがスムーズに寝てくれて、夜中に何度も起きたりしないのであれば、なにも問題ありません。

しかし、生後6ヶ月以上の赤ちゃんで、よく「背中スイッチ」などといわれるように布団に置いたとたんに泣いたり、また夜中に何度も起きたりする場合には、寝かしつけの方法を変えてみることをおすすめします。

赤ちゃんは、抱っこしたり授乳したりしないと寝ないというイメージが強いかもしれませんが、ひとりで布団に寝かせてあげてもちゃんと寝ることができます。抱っこや授乳で寝る習慣がついている赤ちゃんだと最初のうちは泣きますが、たいてい数日で慣れます。1~2週間すれば定着して、睡眠が改善されていることが実感できるでしょう。生活のリズムや寝室の環境を整えたうえで、寝かしつけのトレーニングにチャレンジしてみてください。

また、寝かしつけのトレーニングをしようとしても、授乳すると赤ちゃんが寝てしまうという場合は、睡眠時間が不足している可能性があります。お昼寝の時間を長くする、夜寝る時間を早くする、夜の授乳の時間を早めるなど試してみてください。

お昼寝の寝かしつけのコツ

夜になると体が眠る方向へ働くので寝つきやすいのに対し、お昼寝ではなかなか寝てくれないというのはよくあります。お昼寝の寝かしつけに大切なのは、タイミングを計ることです。早すぎても眠くないし、遅すぎてもぐずってしまいます。そのほか、起きているあいだにしっかり体を動かすことや、寝る直前に興奮するような遊びをしないこともポイントです。少し抱っこしてリラックスさせてあげるなどのルーティンを取り入れるのもおすすめです。

赤ちゃんを寝かしつけるときの注意点

乳幼児突然死症候群(SIDS)や窒息などの事故を防ぐために、安全な寝室であることが非常に重要です。

乳児突然死症候群を予防するために、厚労省は以下の3つのポイントを挙げています。

①仰向けで寝かせる
②できるだけ母乳で育てる
③保護者は禁煙する

また、アメリカの小児学会のガイドラインはさらに細かく、ベビーベッドには枕やぬいぐるみなどを入れないことや固めのマットレスにシーツはぴったり掛けることなどが定められています。

枕やクッションは寝返りしてしまったときに顔をうずめてしまう可能性があるので近くに置かないようにし、同じ理由でマットレスもあまりふかふかのものは避けましょう。また、掛け布団は顔にかかってしまうことがあるので、スリーパーなど着せる毛布のようなものが安全です。

ベビーベッドを使用するのがおすすめですが、住宅環境などの事情で布団を使う場合は、親の布団と赤ちゃんの布団は分けてください。これは保護者の枕や布団による窒息を防ぐためです。

添い乳は安全面からおすすめできませんが、どうしても必要な場合は、赤ちゃんの布団でお母さんが授乳して、終わったら自分の布団に戻るようにすると、一緒に寝落ちしてしまうことが避けられます。

ねんねトレーニングにチャレンジ

赤ちゃんに適した生活リズムや睡眠を整えてあげることはとても大切です。赤ちゃんはしっかり眠れると日中もご機嫌になるので、親子ともストレスなく過ごすことができます。寝かしつけの習慣が原因で赤ちゃんがよく寝られていないかなと思ったら、寝かしつけのトレーニングをおすすめします。なかには、そうやって寝かすのは自分のエゴではないかと罪悪感を持つお母さんもおられるのですが、赤ちゃんがよく寝られるということは赤ちゃんにもお母さんにも良いことなので、ぜひチャレンジしてみてください。

森田麻里子

moritamariko

医師・睡眠専門家

長男が3日で即寝体質になった経験をきっかけに、医学情報に基づき赤ちゃんの健康をサポートする「Child Health Laboratory」を設立。乳幼児の睡眠についてのカウンセリングや講座など行い、自分軸の子育て実現を支援。著書に『医師が教える赤ちゃん快眠メソッド』(ダイヤモンド社)、『東大医学部卒ママ医師が伝える科学的に正しい子育て』(光文社新書)などがある。

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