インタビュー #防災
我が子のいのちを守るために…子どものいる家庭の防災対策10カ条とは
2022年9月9日 10:00
9月1日は防災の日でしたが、災害にはさまざまな種類があります。日本は地理的な理由から地震が多いとされますが、近年はそれ以外にも「気象災害」として水害なども多く、決して防災への準備は他人事ではありません。
もしもの事態に備えて、子どものいる家族ならどんな準備をすればよいか、また実際に災害が起こったらどう行動すればよいか、NPO法人ママプラグ理事・宮丸みゆきさんに心構えやポイントについて伺いました。
~目次~
【その1】まずは地域のハザードマップの確認を
まずはお住まいの地域のハザードマップを確認しましょう。
家のまわりだけでなく、学校や職場、最寄りの駅など、よく行く場所は必ずチェックしておくことです。
また、そこまでのルートにも危険な場所がないかをみておきましょう。地下道を止めて歩道橋のルートにしたり、広い道にするなど、いざというときのリスクを回避できる手段を考えておきたいもの。
ハザードマップは、紙で配られるものの他に、自治体や国土交通省のサイト上でも見られます。洪水や津波、土砂災害など、さまざまな種類に分かれていますが、複数のリスクを調べるには国土交通省の「重ねるハザードマップ」というサイトが便利です。表示する情報を選ぶと、同じ地図上で一度に見られるようになっています。
【その2】自宅のリスクと備蓄をチェックする
自宅が浸水区域や土砂災害の警戒区域であれば避難が必要になりますが、状況によって自宅にとどまっても問題ない場合もあります。
災害の最中に子どもを連れて移動するのはむしろ危険な場合もありますし、避難所で不特定多数の人に囲まれて過ごすよりも自宅の方がストレスは少ないもの。とはいえ、自宅に留まれるかどうかはよく見極めましょう。
確認すべきことは、地震に対しては自宅の「耐震性」に問題がないか。また、避難生活が送れる「備え」があるかどうかです。水や食べ物の備蓄、簡易トイレなどの準備も必要ですし、室内で物が落ちたり、壊れたりしないような対策も行いましょう。
自宅が危険な場合は避難所への移動を考えますが、それ以外に友人・知人、親戚の方のお宅で頼れるところがあれば、そこへの避難も検討してみてください。あるいは大雨や台風などの水害やそれに伴う土砂災害が心配な場合は、安全な場所にあるホテルなどに宿泊してやり過ごすのも1つの方法です。
【その3】小学生以上なら「自分の身を守る方法」を教える
保育園・幼稚園に通う未就学児であれば、保育士や先生の目の届く範囲にいる状態です。ただし、通っている園がどんな防災対策を取っているのかはしっかりと確認しましょう。それで納得したら、信頼して任せること。警報が出ている中で、無理にお迎えに行くのはかえって危険です。
小学生になると、時間によっては子どもだけだったり、携帯も持っていない場合があります。そこで、大人がいない中でも「自分で、自分の身を守る」という意識を持てるように教えておくことが重要です。
例えば通学途中で地震が起きたらどうするか。学校に戻るのか、それとも家に向かうのかなど、具体的なポイントを挙げて確認をすること。また、決められた通学路でも、地震の際に古いブロック塀や工事中の建物がある場所は危険ですし、災害が起きたら普段の時と違うことを子どもとよく話しておきしょう。
【その4】落ち合う場所と時間を決めておく
地域の指定避難所は、親子ともどもしっかり確認しておきましょう。また、避難所はわかっていても、大きな災害では人も殺到しますし、なかなか落ち合えない場合もあります。そこでたとえば校門や鉄棒の前など、集合場所と時間まで決めておくと不安がないでしょう。
また、携帯を持っていても、災害発生時には災害用伝言板などのサービスを除いて、電話もメールもほぼ使えなくなることが予想されます。ただし公衆電話は通信規制の対象外となるため、通じる場合があります。今の子どもの多くは公衆電話を使ったことがないですから、時間のあるときに試してみるとよいでしょう。
【その5】とっさの瞬間、どう逃げたらよいか?
子どものまわりでは、火災、地震、津波など災害別の防災訓練の機会が意外と多いものです。ただし、集団で訓練していると細かいところは見落としがちです。たとえば机の下に潜るなら、頭を入れるだけでなく机の足を両手で持って両膝をしっかりつけるなど、体勢まできちんと練習しておくことです。
あとは、家の中で急に揺れたらどこが安全か、あるいはキッチンからは絶対出なければいけないなど、安全な場所、危険な場所の判断がつくように伝えましょう。
【その6】「防災ごっこ」で楽しみながら身につける
防災の話はもちろん重要なことですが、やみくもに子どもを怖がらせず、「防災ごっこ」のような遊び感覚で取り組むことがおすすめです。
「今日は停電」という設定で、「ランタンの灯りでご飯を食べてみよう」とか、「懐中電灯でトイレに行ってみよう」などと挑戦してみると、楽しみながら対策が身につきます。
【その7】防災リュックは各自で持つ
ついやってしまいがちなのは、避難リュックを家族で1個にしてしまうことです。リュックは家族1人につき1個にして、歩けるような子どもなら1つ背負うとするとよいでしょう。
それは荷物を分散するだけでなく、万一はぐれてしまっても、必要なものが背中にあれば子どもにとっても便利だからです。子どものリュックの中にはウエットティッシュやタオル、飲み物、好きなお菓子などのほか、ホイッスルも入れて必要なときにすぐ使えるようにしておきましょう。
【その8】パーソナルカードに名前や連絡先を書く
ぜひ入れておくとよいのは、「パーソナルカード」です。子どもの名前はもちろん、家族の名前や連絡先、そして持病がある場合などもそこに書いておきましょう。家族写真を入れると、もしはぐれても探しやすくなります。
また、食物アレルギーがある場合も明記しておきたいものです。小さな子どもには、まわりの大人が好意でお菓子をくれたりすることがありますが、過去には避難所でアナフィラキシーショックを起こしてしまったケースもあります。
また特に発達障害の子どもの場合には、その子が安心できるように普段の呼び名や好きな食べ物、遊びなど落ち着いて過ごせるポイントを書いておくと、万一離れてしまったり、親が面倒を見られない時にも安心です。
【その9】子どもが安心して過ごせる物を常備する
子どものリュックには必要最低限の物だけでなく、時間を有効に過ごせる物やふだん大切にしている物の予備を入れておきましょう。
今の子どもはYouTubeを見たり、ゲームをすることが多いですが、災害時はそれができません。かといって必要以上に不安やストレスを抱え込まないように、その子が好きで、心が安定するもの、リュックに入れてもかさばらず、なるべく音が出ないようなものがあるとよいでしょう。
ただし、発達障害の子の場合、いつも好きなゲームをやっていて、それをとりあげられると騒ぎ出してしまうこともあります。本当に必要だと思えば、充電バッテリーを持っておくとよいかもしれません。あるいは普段から折り紙やあやとり、カードゲームなど停電していてもできる遊びに慣れておくのも、ある種の災害対応の1つです。
【その10】防災リュックをふだんから活用する
せっかく防災リュックを持っても、入れっぱなしにしては意味がありません。定期的に見直して入れ替えるようにしましょう。
子どもはどんどん成長しますから、育児用品も状況に応じて変わりますし、季節によって夏なら虫よけや虫刺されの薬、熱中症対策、冬ならカイロやニットキャップなどがほしいところ。リュックの中身は普段から把握しておくことです。
食料品や日用品のストックを定期的に入れ替えて使う備蓄方法のことを「ローリングストック法」といいますが、その保管場所の一部を防災リュックにすると便利です。必要なものが実際に役立つかを確認するために、リュックを持ってピクニックに行くのもおすすめです。
子どもの場合、遠足に使うリュックを災害時にも応用すれば、遠足のときにも一部入れ替えるだけで活用できます。
非常時用としてあまり構えすぎず、日頃から活用していれば、いざというときも有効に使えます。自分なりに使いやすいものをそろえることで、便利で安心なマイ防災リュックができるでしょう。
防災対策は非常時のためのものですが、日常での備えがあってこそです。普段の生活の中で自然に生きる力を身につけられるよう、親子で取り組んでみてください。
宮丸みゆき
miyamaru miyuki
NPO法人ママプラグ 理事
NPO法人ママプラグは、子育ての当事者が直面する社会問題について、クリエイティブな視点から解決に向けた取り組みを行う。誰でも負担なくできる防災への取り組みを提案する「アクティブ防災」のほか、女性の生き方を応援する「キャリア事業」、被災母子支援などの事業展開も。
おすすめコラム
こちらの記事も
おすすめ!