インタビュー

子どもの自己肯定感を高める「褒め方」とは?

2022年3月25日 14:36

目次

    どうしてうちの子は努力ができないの? なんでうちの子はすぐに諦めてしまうのかしら……、というように、わが子から「やる気」が感じられず、困っている保護者の方は少なくありません。

     

    「褒めて伸ばす」というけれど、褒めたら調子に乗って怠けてしまうし、「叱って頑張らせよう」とするとふてくされてしまう。そんな親の悩みに、脳科学者の瀧靖之先生は「褒めかたにはコツがある」と話しています。本記事では、瀧先生に、褒め上手な親になるための極意を伺いました。

    子どものやる気を芽生えさせる接し方

    子どもに限らず、人はポジティブな対応をされると「やる気」が芽生え、頑張りがきくようになる傾向にあります。自信のなかったことでも「頑張っているね」と声をかけられるだけで、「もっと頑張ろう」と思えるようになった経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。

     

    たとえば、料理が苦手な人でも、一生懸命作った料理を「美味しい」と笑顔で食べてもらえたら、また作ってあげたいと思えるでしょう。

     

    しかし「もう少し塩を多くしたほうが…」とか、「盛り付けをこうしたほうが…」と、意見されたら、「やはり、自分には料理は向いていないんだ」「作らなければ良かった」とネガティブな気持ちになってしまうかもしれません。

    自己肯定感をアップさせるってどういうこと?

    子どもの「自己肯定感を高める」ことで、前述した料理の話でいうと、単純に「美味しい」といわれたときには、「作った料理を認めてもらえた」と感じ、自分のしたことを肯定的に捉えることができるようになります。

     

    褒めてもらえたのは料理だけなのですが、自分自身の存在を肯定してもらえたと感じるわけです。これが自己肯定感を高めるきっかけになります。

     

    一方、料理について意見を言われたときには、苦手なことに挑戦してみたけれど満足してもらえなかった。やっぱり認めてもらえなかったら残念な気持ちになるでしょう。料理一品のことではありますが、努力した結果を認めてもらえないと残念な気持ちになり、さらには「自分ってだめだ」と自己否定をしてしまいます。これが自己肯定感を下げる原因になり得ます。

     

    つまり、子どもの自己肯定感を上げるには、そこまでの道のりを「認めてあげる」「褒めてあげる」ことが非常に大切になるのです。

    脳科学で証明されたポジティブ子育て優位性

    褒める行動を中心としたポジティブな子育てスタイルが「子どもの心理的および認知的発達に影響を与える」ことは、私たちの研究でも明らかになっています。

     

    親が子どもを褒めることでプラスの効果を生む事実は、これまでの心理学的研究のなかでも明らかになっていたものの、脳の発育にも関係するということは、ほとんど知られていませんでした。

     

    そこで私たちは平均年齢10.6歳の男児116人、女児109人について、親の称賛の多さと脳の体積の関係を、磁気共鳴画像法(MRI)とボクセルベースの形態計測(VBM)という機器を使って調査しました。

     

    結果、親の称賛を受けることが多い子ども達は脳の発達と有意な相関があり、さらに性格面でも誠実性や開放性に有意な相関があったということが分かったのです。「褒めることでよい子が育つ」と言っても過言ではないでしょう。

    才能ではなく、努力を褒める!

    子育てにおいて褒めることが大切とはいえ、褒めかたのポイントを押さえておかないと、反対に子どものやる気をそいでしまうことがあります。

     

    もっとも気を付けるべき点としては、子どもの才能や能力に対して反応しないことです。「絵の才能があるから、将来は画家になれるかも」とか、「運動神経がいいからオリンピック選手になれるかもしれない」といった褒めかたをすると、子どもは自分の才能に傷がつくことを恐れて、才能を伸ばす努力をしなくなる場合があります。

     

    せっかく褒められた才能なのに、失敗したり誰かに負けてしまったりしたら悲しいと考えるからです。

     

    では、どうするべきなのでしょうか。

     

    子どものやる気を助長するには、「努力」に対してポジティブな反応をするべきです。結果が良くても悪くても「頑張った」「やり続けてえらかった」と、経験そのものを褒めてあげるのです。

     

    もともと子どもに才能があって、簡単にできてしまうようなことであっても「あなたが頑張ったからできた」と声をかけてあげましょう。運動神経の良い子が徒競走で1位を取ったら「運動神経が良いから1位が取れたね」ではなく、「普段からたくさん走っているから、みんなより速く走れたね」と、子ども自身がこれまでの道のりを振り返れられるように導くと良いですね。

     

    努力を認められると、子どもの自己肯定感は高まっていきます。自分に自信を持って前向きに生きられるようになれば、学業成績のアップにもつながる可能性は十分にあると考えられます。

     

    そうして子どもの自己肯定感が上がっていくと、親の自己肯定感もアップする傾向にあります。わが子の生き方が、親にもポジティブな影響を与えてくれるというわけです。

    まとめ

    褒めて育てられた子は、脳の発達が促されると同時に、性格的にも誠実で明るい子に育つ傾向があります。褒め方のコツは、才能ではなく、子どもの努力を褒めること。日々の頑張りを認めてあげることで、子どものやる気スイッチをオンにしてあげましょう。

    瀧 靖之

    YASUYUKI TAKI

    医師・医学博士

    東北大学大学院医学系研究科博士課程卒業。東北大学加齢医学研究所機能画像医学研究分野教授。東北大学東北メディカル・メガバンク機構教授。 東北大学病院加齢核医学科長としての画像診断、東北大学加齢医学研究所で脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達、加齢のメカニズムを明らかにする研究者として活躍。読影や解析をした脳MRIはこれまでに16万人にのぼる。「脳の発達と加齢に関する脳画像研究」「睡眠と海馬の関係に関する研究」「肥満と脳萎縮の関係に関する研究」など多くの論文を発表。学術誌はじめ新聞・テレビなど、マスコミでも数多く取り上げられ注目を集めている。