インタビュー

習い事は何歳からさせるのが正解なのか…脳科学者が解説!

2022年3月25日 17:12

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    スポーツや芸術、語学など、子どもに習いごとをさせたいけれど、何歳から始めるべきなのか……と悩む保護者の方は少なくありません。そこで本記事では、脳科学者の瀧靖之先生に、脳科学的な見地から、子どもの習いごとと年齢の関係について伺いました。

    スポーツや楽器演奏は「3歳から」が効果的⁉

    オリンピックに出場するようなアスリートや、世界的に活躍する楽器演奏者が「3歳から習い始めた」と言葉にするのをよく耳にします。

    これは、脳科学的にもうなずけることで、3歳というのは、楽器演奏やスポーツをスタートするのに脳の発達がちょうどよい時期と考えられます。

    たとえば運動機能でいうと、1歳を過ぎると歩けるようになり、3歳ごろまでに両足ジャンプやケンケンなどができるようになり、5歳ごろにはちょっとしたダンスも踊れるようになります。ダンス教室で複雑な動きを習うのであれば、基本的な「走る」「飛ぶ」動作ができるようになった3歳ごろが適当といえるのではないでしょうか。

    楽器演奏であれば、手先の器用さを考えると歳くらいが適当であると同時に、「見る」「聞く」「演奏する」というマルチタスク、さらに楽譜を覚えるワーキングメモリも、3歳ごろであれば対応可能になるでしょう。

    人間は何歳からでもチャレンジし、上達することができる

    3歳より遅くスタートしたら才能を輝かせることはできないのかと、残念に思うかもしれませんが、そのような心配はありません。あくまで、平均的な脳の発達と照らし合わせたときに、最適な時期というだけなのです。

    人の脳には可塑性があり、何歳から何を初めても、必ず成長することがわかっています。たとえば60歳からピアノを始めても、上達のスピードは若いころに比べてゆっくりになるかもしれませんが、練習すれば必ず上達していきます。

    ピアノを3歳から始めても、6歳から始めても本人の努力で上達しますし、楽しんで演奏することは可能です。子どもが「習いごとをしたい」と訴えてきたときには、年齢に関係なく検討してみるべきでしょう。

    才能を開花させるために、必ず習い事をさせるべき?

    こうした話を耳にすると、何が何でも習いごとをさせようとする保護者の方もいるのですが、子どもに「やる気」がないのであれば、無理にやらせる必要は無いかもしれません。

    それでも、「この楽器の演奏をしてほしい」「このスポーツに親しんでほしい」などと、保護者が望むのでしたら、まずは保護者の方が、その事柄にチャレンジしてみてください。上手い下手は関係ありません。親が楽しんでいると、子どもはうらやましくて仕方なくなります。「やらせて!」といってくればしめたものです。親子で楽しむようになると、子どもは「お母さんより、お父さんより上手になりたい」と頑張るようになるでしょう。

    子どものやりたいことが見つからない場合は…

    どんな習いごとをさせるのがいいかという質問を受けることもありますが、本人にやる気があるならどんなものでもよいでしょう。とはいえ、小学校入学前の子どもが自発的に「これをやりたい」といってくるケースは少ないかもしれません。

    そこでおすすめするのがアウトドアです。公園などで虫を見つける、低山を登る、畑で野菜を栽培する、キャンプに行くなど、屋外で自然を楽しむ遊びを親子でしてみてください。

    自然を相手にする場合、少なからず私たちは体を動かします。そして、自然に立ち向かうためには予測をする、次の行動を自分で考えて決める、ときには誰かと協力もしなければなりません。脳のさまざまな部位を使って、いろんな判断や運動をしますから、脳の発達が促されると考えられます。

    学習意欲の向上につながる自然とのふれあい

    アウトドアには知的好奇心をくすぐる要素もふんだんにあります。空を見上げれば雲の形や動き、星の並びや輝きが気になる子がいることでしょう。海や川では生き物や石ころに興味を持つ子がいるかもしれません。近所の公園でも、ありの行列を飽きずに眺める子、ダンゴムシの動きに熱中する子もいるでしょう。

    子どもが興味を持った事柄に対して、親が一緒になって楽しみ、図鑑で調べたり、動物園や植物園に行ってみたりするのもいいでしょう。親子でコミュニケーションを取りながら、知的好奇心を満たしていくのは、脳の前頭前野の発達に非常に高い効果が見込まれます。

    こういう経験は、小学校入学以降の学習にもおおいに役立ちます。「興味を持つ→観察する→疑問を持つ→調べる→さらに詳しく知りたくなる」というループは、学習意欲の根本です。疑問を持ち、それを解決するための能力が自然と養われるのです。

    まずは親子で自然を楽しみ、探求心や知的意欲を育ててみてはいかがでしょうか。

    まとめ

    習いごとのスタートは何歳からでも大丈夫です。何かやらせたいことがあるなら、まず保護者が楽しんで実践してみましょう。何を習わせるべきか悩んでいるなら、子どもの知的好奇心を育てるためにも、親子で自然を楽しむ遊びをするのがおすすめです。

    瀧 靖之

    YASUYUKI TAKI

    医師・医学博士

    東北大学大学院医学系研究科博士課程卒業。東北大学加齢医学研究所機能画像医学研究分野教授。東北大学東北メディカル・メガバンク機構教授。 東北大学病院加齢核医学科長としての画像診断、東北大学加齢医学研究所で脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達、加齢のメカニズムを明らかにする研究者として活躍。読影や解析をした脳MRIはこれまでに16万人にのぼる。「脳の発達と加齢に関する脳画像研究」「睡眠と海馬の関係に関する研究」「肥満と脳萎縮の関係に関する研究」など多くの論文を発表。学術誌はじめ新聞・テレビなど、マスコミでも数多く取り上げられ注目を集めている。