インタビュー

脳科学者・瀧靖之氏が語る…「子どもの才能」を伸ばす方法

2022年3月10日 16:56

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    わが子には好奇心旺盛で、いろいろなことにチャレンジできる子になってほしい。そして、できるだけ賢く、能力の高い子に育ってもらいたい。親なら少なからず誰もが願うことでしょう。では、わが子の能力を伸ばすために、親にできることは何でしょうか。「脳の発達」の専門家である脳科学者、瀧靖之先生にお話を伺いました。

    脳がもっとも発達する年齢とは?

    まず、知ってほしいのは、脳の発達は機能によって伸びる時期に違いがあるという点です。脳にはさまざまな機能がありますが、すべての機能が同じように伸びていくわけではありません。早くから成長が始まるもの、ある程度年齢が高くなってから成長するものというように、機能によって飛躍的に成長する時期があるのです。

    誕生直後は脳の後頭葉や側頭葉が急速に発達し、「見る」「聞く」「触る」などの感覚機能が成長します。自分の周りに何があるのかを視覚、聴覚、味覚、触覚、嗅覚を使って感じ取ります。同時に、自分にとって安全な声や顔、表情を知り、母親や父親の愛情に安心感を覚えるようになります。

    次に発達するのは脳の中央部にある頭頂葉や運動野で、言語や運動機能の発達が促されます。5歳ごろにかけて特に発達するといわれており、語彙が増えおしゃべりが上手になっていきます。運動面では「歩く」「走る」「飛ぶ」といった簡単な動作から、手先を使った巧緻性や、バランスを保つ難しい動作も獲得していきます。

    最後に成長のピークを迎えるのは、脳の前頭前野が司る高次認知機能です。思考、判断、創造、コミュニケーションといった、人間らしさに関わる能力で、小学校入学ごろから高校生くらいまで活発に発達していきます。

    「読み聞かせ」が愛着形成を促す

    赤ちゃんとの触れ合いによって、特定の人とのあいだに特別な情愛が生まれることを「愛着形成」といいますが、順調な愛着形成を得た子どもは、脳の発達がより促進されると考えられています。

    何があっても自分を愛してくれる存在があるというのは、子どもにとって最大の安心感になります。だからこそいろいろなことにチャレンジできるし、失敗してもくじけずまた挑戦ができるのです。

    愛着形成を基本に考えると、誕生直後は愛情あふれる声かけや、優しくタッチングする、笑顔をたくさん見せてあげることがとても重要です。お母さんが笑えば赤ちゃんも笑う、話しかけると声を発する、触ってあげると心地よく感じる、そんな日々のやりとりが愛着を形成し、脳の発達にも良い影響を与えます。

    母国語の発達が進んでいく1歳半ごろからは「読み聞かせ」がおすすめです。こちらも愛着形成を同時に考えることが重要なので、ぜひ膝の上にお子さんを乗せ、体同士が触れ合った状態で読み聞かせてあげましょう。親御さんのぬくもりと、抑揚のついた生の声、これらが子どもの脳の発達を促すといわれています。

    また、読み聞かせをたくさんしてもらった子は読書好きになる傾向が高いですから、その後の知的好奇心や学習意欲にも関わっていくのは当然であると考えられるのです。

    好奇心を育てる図鑑とお出かけ。アウトドアは最強!

    子どもがもう少し大きくなってからは、図鑑を用意してあげましょう。生き物や星空、科学的な事象、植物など、何でもいいのですが、芽生えた好奇心を大切に育てるためにも、知識を増やしていくことが重要です。親子で図鑑を見るのもいいですし、お子さんが一人で図鑑を見ていたら「いつも同じ図鑑ばかり……」と思わずにそっとしておくのも大切です。

    そして、その興味を広げるためにも博物館や科学館、動物園や水族館に行くと、さらに興味が広がり、自宅に戻ってから改めて図鑑を見直したり、親御さんと一緒に図書館で調べたりと、物事を追求していく力の礎ができていきます。

    同時に、実際のものを見たり触ったりする体験もさせてあげましょう。おすすめはアウトドアです。虫や植物を実際に見て触り、四季折々の風景、気候や時刻によって移り変わる空気感に触れることは、脳にたくさんの刺激を与えてくれます。

    釣りをして、釣った魚を調理して食べるのもいいですね。料理はマルチタスクの練習にもなりますし、五感すべてを使う貴重な体験です。

    楽器演奏が脳を活性化させ、さまざまな能力を高める

    3歳ごろから、アウトドアと同じくらい脳の発達によいとされるのが楽器演奏です。

    多くの優秀な楽器演奏者が3歳ごろから楽器の練習を始めていますが、それもそのはず、一生のうちでもっとも早く習得できるのが、この時期だといわれているからです。

    楽器はただ弾くだけでなく、楽譜を見てワーキングメモリを増やす、五線譜に書いてあることを理解する、演奏するための巧緻性、リズムがずれたり弾き間違えたら戻ってフィードバックするなど、さまざまな能力が必要とされます。それだけ脳の様々な領域を刺激し、発達が促されることが明らかになっています。

    子どもの好奇心を育てるには、第一に愛着を育てる接し方が基本です。その上で、読み聞かせ、アウトドア、楽器演奏がおすすめです。

    ただし、いずれも強制するのは良くありません。特に楽器演奏やアウトドアに関しては、まず親が楽しんでいる姿を見せましょう。親が楽しそうにしていると、子どもは「やってみたい」と思うものです。興味を持ったら、上手にできなくても批判や意見は言わずに見守る力を親が持つことが大切です。

    子ども自身が「ママやパパみたいにやりたい」と思うようになれば、強制しなくても練習やチャレンジを続けていくでしょう。

     

    瀧 靖之

    YASUYUKI TAKI

    医師・医学博士

    東北大学大学院医学系研究科博士課程卒業。東北大学加齢医学研究所機能画像医学研究分野教授。東北大学東北メディカル・メガバンク機構教授。 東北大学病院加齢核医学科長としての画像診断、東北大学加齢医学研究所で脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達、加齢のメカニズムを明らかにする研究者として活躍。読影や解析をした脳MRIはこれまでに16万人にのぼる。「脳の発達と加齢に関する脳画像研究」「睡眠と海馬の関係に関する研究」「肥満と脳萎縮の関係に関する研究」など多くの論文を発表。学術誌はじめ新聞・テレビなど、マスコミでも数多く取り上げられ注目を集めている。