インタビュー

子どものおやつはなぜ必要?医師おすすめの栄養満点レシピ&市販のおやつ【分子栄養学専門家監修】

2023年9月3日 12:10

子どもにとっては時にご褒美になったり、何かを頑張るためのモチベーションにもなるおやつ。でもそれだけではありません。おやつは上手に取り入れれば、子どもの成長に大事な栄養補給にも役立ってくれるのです。

そこで今回は口腔クリニックの院長でもあり、分子栄養学の専門家でもある安藤麻希子先生にインタビュー。おやつの役割や栄養価の高いおやつの選び方を教えていただきました。

子どもにおやつが必要な2つの理由

おやつが必要な理由①:足りない栄養を補う

子どもが成長するためには多くのエネルギーやタンパク質などを必要とします。ところが小さな子ほど1食に食べられる量が限られていたり、消化吸収力がそこまで高くありません。ですから3食の食事だけでは足りないエネルギーや栄養素を補う「補食」としておやつをとる、というのが基本の考えになります。

おやつが必要な理由②:自律神経を整えて心身ともに安定させる

子どもは1食に食べられる量が少ないので、血糖値を維持する力も弱く、何も食べていない間に低血糖を起こすリスクもあります。脳の主なエネルギー源は糖ですから、低血糖によって脳に糖が供給されないと、交感神経が刺激されてアドレナリンが分泌されます。そうすると体が緊張したり、不安やイライラを感じるなど体調やメンタルに不調があらわれます。これまでの栄養学ではあまり注目されることはありませんでしたが、低血糖を防いで自律神経のバランスを整えるというのもおやつや補食の役割として知っておいてほしいポイントになります。

子どもの上手なおやつのとり

おやつの量や内容は、性別や年齢、活動内容やストレスのかかり具合、一度の食事の量や消化吸収力などによっても個人差があります。

1〜3歳の乳幼児:フォローアップミルクで不足栄養をカバー

まだ母乳を飲んでいたり、食べられる量が少ない乳幼児の場合、3食の食事以外の栄養補給のベースにおすすめしたいのがフォローアップミルクです。実はこのくらいの年齢の子の多くがエネルギーと鉄とビタミンDが特に不足しており、特に完全母乳で育った子は鉄もビタミンDも欠乏リスクが高い傾向にあります。

母子手帳では1歳過ぎから牛乳を推奨していますが、牛乳には亜鉛や鉄の含有量が少なく、一方フォローアップミルクは鉄や亜鉛、またその他の栄養素も補給できます。(現在日本のフォローアップミルクで亜鉛が含まれているものは限られています。海外製がおすすめ。)

プラス補食としてバナナやサツマイモなどまたオートミールを使ったクッキーなどは栄養価も高くおすすめです。

4歳以降:エネルギーとタンパク質、ミネラル補給

1日の食事の総カロリーに占めるおやつのカロリーは、だいたい10〜20%とされています。成長にともない、とらなければならない必要な摂取カロリーが増える3歳以降は、200キロカロリー程度を目安におやつをあげましょう。だいたいコンビニサイズのおにぎりで具材にもよりますが170~180kcalです。これを目処にすると分かりやすいと思います。エネルギーと一緒にタンパク質やミネラルも補えるようにおにぎりなら、鮭やかつお節の具材やしらすや青のり、わかめなどを入れる工夫をしてみてください。

おやつを食べるベストなタイミングは?

保育園や幼稚園では午前と午後におやつの時間がありますが、本当は小中学校でも同じような時間におやつを食べられるのが理想です。健康な人の場合、食後に血糖値が上がり、2時間くらいで下がっていきます。この食後2、3時間に少しおやつ食べることにより、低血糖を防ぎ交感神経の過緊張を抑えてくれます。実際には午前中のおやつは難しいのが現状なので、学校から帰ったら宿題や遊びに行く前に必ずおやつを食べてもらいましょう。

さらに補足すると、食が細い子については就寝前の1、2時間前のおやつもおすすめしています。寝る前は胃腸を休ませたほうがいいという話もありますが、食べられる量が少なかったり体質によっては、寝ている間に夜間低血糖を起こす場合があります。そうすると何度も目が覚めたり、歯ぎしりや食いしばりが起きやすく、眠りの質の低下にもつながります。夕飯の2、3時間後くらいに少しだけエネルギーを補給しておくと、熟睡しやすくなります。

おやつを選ぶときの注意点

①食品添加物をできるだけ避ける

最近、特に注目されているのが、人工甘味料です。具体的な名称をあげると、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム(アセスルファムK)、サッカリンナトリウム。人工甘味料は腸内細菌のバランスや血糖値コントロールを乱すだけでなく、発ガンの原因になる可能性も示唆されています。また「ゼロカロリーなので体にいい」という誤解もあるのが問題です。

添加物でもう一つ注意したいのがリン酸塩。ミネラルと結合して吸収を妨げる性質があるので、最近問題にされている新型栄養失調の一因とも考えられています。リン酸塩を含んだ食品を摂った場合は、できるだけミネラルの多い食事を心がけましょう。

②活動量に見合ったカロリーを摂取する

砂糖が多すぎるものは避けた方がいいですが、激しい運動をするような場合は適切な糖質も必要です。運動をする子におすすめなのは、おにぎりよりもカロリーが高いお稲荷さん。極端な健康志向で砂糖も炭水化物も取らない方がいいと考える方もいますが、実際には運動をしているお子さんの多くがエネルギー不足で、中には成長障害から身長が伸び悩んでいる。というご相談もよく受けます。お稲荷さんは寿司飯にするので糖質がプラス。油揚げから、たんぱく質と脂質、カルシウム、鉄の摂取が期待できます。運動に見合った必要なカロリーを満たすことが大切です。

③糖質とタンパク質のどちらも含まれたものを

筋肉や骨などのためにできればタンパク質も含まれたものが望ましいのですが、子どもの場合注意したいのがタンパク質だけではなく、すぐにエネルギー源となる糖質もあった方がいいということです。大切なタンパク質も、必要なエネルギーが満たされてこそはじめて体の中で筋肉などの材料として使われます。エネルギー不足の状態ではせっかくとったタンパク質もエネルギーとして使われてしまいます。

栄養面で優れたおすすめのおやつ

ここではお店で買うことができるおやつから、誰でも手軽に作れるおやつ、最後に私がおすすめしたい手作りおやつのレシピをご紹介します。

①忙しい方に市販のおやつ

・無印良品

添加物を極力減らしたおやつが多く取り扱われています。

・亜鉛補給にミックスシード

健康食品を取り扱うお店などでは、亜鉛を多く含むゴマや松の実、カボチャ・ひまわりのタネがパックになったものが売られています。アイスクリームやヨーグルトにトッピングするとお子さんでも食べやすいです。

・ミネラル補給にごませんべい

おせんべいならゴマ入りや大豆入りなどを選ぶとミネラルも補給できます。

・フィッシュアーモンド

煮干しとアーモンドでカルシウムやマグネシウムのミネラルがたっぷり。子どもに与えたいおやつの代表格です。

②簡単&ラクに作れる安心おやつ

・ふかしいも+バター

カロリーと脂質が一緒に摂れるので痩せ型の子にもおすすめ。他にじゃがいもにオイルをまぶしオーブンで焼き、最後にアオサを振りかける手作りフライドポテトもおすすめ。

・トッピングヨーグルト

ヨーグルトに果物やナッツをトッピングしてビタミンやミネラルも補給。また優れた健康効果で注目のMCTオイルもすぐにエネルギーになりおすすめです。

・きなこ餅

きなこはとても栄養価が高く子どもも好きなのでおやつにピッタリ。砂糖と一緒にお餅にまぶすだけで、糖質とタンパク質を一緒に摂ることができます。きなこの他にチーズをのせたお餅もお手軽です。

③栄養満点手作りおやつ マグネシウムボール

私のイチオシの手作りおやつをご紹介します。デーツを使いマグネシウム豊富なアーモンドやココア、オートミールを使用したチョコレート風の菓子で、チョコ好きも大満足。子どもと一緒なら泥んこボールを作っているように楽しめます。

<材料>
デーツ:180g
オートミール(ロールドオーツ):適量
アーモンド:適量
ココアパウダー:20gくらい
塩:ひとつまみ
あればココナッツファイン:適量
※その他クルミ・レーズン・バナナ・シナモンなどお好みの具材に変えたり、追加するのも可

<作り方>

1.デーツを大さじ1〜2の水につけて柔らかくしてから、キッチンバサミで小さ目にカット
2.デーツをフードプロセッサーに入れる
3.オートミール、アーモンドもフードプロセッサーで粉砕
4. 2に3を混ぜココアパウダーも混ぜる。パサパサする場合はデーツをつけておいた水を少しずつ加えて硬さを調整
5.お好みの大きさに丸める。(写真は直径1.5cmくらい)
6.でき上がったマグネシウムボールにココナッツファインをまぶす(なくてもOK)
7.冷蔵庫で冷やす
※ボールを丸める時に少し手に油やギーをつけておくとくっつきにくくなります。

パパママも子どもと一緒におやつの時間を

今回は栄養療法の観点からお話をしましたが、ここでご紹介したおやつが必ずしも子どもが食べたいものかというと、どうしても違ってくるかと思います。糖質は一切ダメという考え方の先生もいますし、過去には子どものおやつはナッツや卵だけとストイックにやった結果、親子関係をこじらせてしまったケースも見てきました。大切なのはバランスだと思います。おやつは子どもにとっての楽しみでもありますので、好きなおやつにプラスして栄養補給の観点からのおやつももう1品、といった感じでもいいのではないでしょうか。

子どものために手作りおやつと聞けばハードルも高く、パパママが元気でないとできることではありません。特にママは、子どもには食べさせるけれど自分は食べないという方が多く心配です。夕飯の支度を始める時間帯というのは、親御さんも低血糖を起こしてイライラしがち。ぜひパパママも子どもと一緒におやつをつまんで、元気に過ごしてください。

安藤麻希子

ando makiko

歯科医師

オーソモレキュラーアカデミー主宰/一般社団法人分子整合栄養医学普及協会 代表理事/あんどう口腔クリニック院長 歯科医師。 日本歯科大学卒業。札幌医科大学口腔外科臨床研修医を経て、開業医の勤務医として一般歯科治療に携わる。「ママは家庭のドクターになれる!」をモットーに、分子整合栄養医学の知識をもとに個々に合わせた栄養療法を伝えている。

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