インタビュー
【走り方指導の専門家監修】子どもの足が速くなる!走りの技術を向上させる方法
2023年11月2日 16:26
運動会の徒競走で1位になったり、リレーの選手に選ばれたり、試合で活躍をしたり…。「足が速い」ということは、子どもにとって大きな自信と自己肯定感に繋がる特技の一つかもしれません。
そこで今回は走りの専門家としてたくさんの子どもたちに技術指導を行ってきたまえだコーチにインタビュー。学校ではあまり習わない「足が速くなる走り方」についてお話を伺いました。
~目次~
足の速さは何で決まる?遺伝と関係がある?
遺伝の影響はあると思います。筋肉には速い筋肉と遅い筋肉というものがあって、速い筋肉というのは短距離走のような瞬発力を必要とする運動を得意とします。この2つの筋肉の割合が遺伝によって変わると言われているので、足の速さにも影響してきます。
もう一つ、運動神経も関係すると考えられます。運動神経というのは思ったように身体をコントロールできる能力のこと。短距離走は全身を素早く動かして移動する運動なので、やはり運動神経が良い方が有利ですし、逆に言えば運動神経を高めたり競技のパフォーマンスを上げるために短距離走は有効なトレーニングでもあります。
生まれ持った遺伝の影響とは関係なく、正しい走りの技術を身につけることで、誰でも必ず足は速くなります。
足の速い子と遅い子の違いは?
足の速い子と遅い子の違いは次の3つが考えられます。
1)身体をコントロールする能力
いわゆる運動神経の違いです。例えば野球のバッティングでも「ここに打ってね」と言ってもできない子もいます。ですから脳からのアプローチも大事だと思います。
2)ジャンプの高さ・上手さ
ジャンプが苦手でドタバタと跳ぶような子は、走るときもドタバタしてしまうことが多いです。ジャンプの上手さというのは高さだけではなく、接地が軽いこともポイント。接地時間が短く、ジャンプ力が高い子ほど速く走れます。
3)全身の使い方
特に上半身の使い方がポイントで、例えばジャンプをする時も足が遅い子は足だけで跳ぼうとします。それに対して足が速い子は腕を大きく振った勢いを使ってジャンプをすることができます。
速く走るための正しいフォーム
速く走るためには次の4つを意識しましょう。
1)姿勢
ヘソとみぞおちの距離が最も長くなるような姿勢を保ちます。猫背になっても逆に背中を反っても距離は短くなるので、背を伸ばすようにまっすぐな姿勢を意識しましょう。
2)腕の振り方
顔の前からお尻の横まで大きくまっすぐに腕を振ります。ズボンのポケットを擦って音を出すイメージで大きく振りましょう。
3)足の接地について
地面に接地する箇所は足裏の前半分です。ジャンプをするときは足の前側に体重が乗りますが、ここが一番力が入りやすい場所。足の前半分でポンポン弾む意識を持ちましょう。
4)足の動かし方
足が遅い子によく見られるのが、膝を中心に動かす走り方。逆に速く走るためには股関節から大きく動かすことが大切です。例えば左足が接地している場合、反対の浮いている右の足首が左膝のラインを越えるように高く上げます。このイメージを持つことで股関節をメインに動かす走り方になります。
速く走るためにできること
幼児期には細かい走りの技術を高めるというより、足が早くなる要素が詰まっている遊びを通じて、正しい身体の動かし方を身につけていくことが大切です。
1)柔らかい地面の上で遊ぶ
砂浜や布団の上など柔らかくアンバランスな地面で動くことにより、膝ではなく股関節をたくさん動かすことができます。そのすることで足が速くなるための股関節の動きが習得できます。
2)緩やかな坂道を早歩き
緩やかな下り坂を歩くことで重心移動の感覚を身につけることができるので、「歩く」から「走る」への移行期間は特におすすめです。
3)裸足で走る
小さい頃に裸足で走ったり遊ぶことで、足裏の感覚を育てることができます。
この他にも、足が速くなるためにはスキップ・ジャンプをすることがおすすめです。鬼ごっこや縄跳びなど、1つのスポーツや動きに偏ることなく、いろいろな遊びや動きをしてみてください。
走り方を教えるときのポイント
本格的な走り方の技術を身につけるタイミングとしては、走り方や姿勢が乱れてきやすい小学校低学年からがおすすめです。ここでは専門家が教える時に意識していることをご紹介します。
1)基準を明確にする
先ほどご紹介した腕の振り方にしても、単に「真っ直ぐ振ってね」では子どもたちにはなかなか伝わりません。「ポケットを擦るように」といったような具体的な基準を示すことを大切にしています。
2)楽しみながら習得させる
特に幼児期や小学校低学年までは、楽しむことや好奇心が成長のスピードを後押ししてくれます。子どもが楽しいと思えるような遊びを取り入れながら習得させていくことを心がけています。
3)成功体験を積み重ねる
例えば苦手なことがあったら1つレベルを下げてやらせてみます。できたらしっかりと褒め、子どもの自信を積み重ねていくことを意識しています。
4)動画を使って確認する
本人は教えられた通りに身体を動かしているつもりでも、実際はできていないことも多くあります。このような主観と客観のズレを確認するためにも動画はおすすめです。走っている姿を撮影し、その都度動画を止めて身体の位置などを確認させます。
走りの技術を身につけて一歩抜き出よう!
小学校高学年頃になると自分が本当にやりたいスポーツが決まってくると思います。野球、サッカー、バスケット、すべてにおいて走りの技術はとても重要です。ところが正しい走り方を習ったことがある子というのは、本当に全体の1割か2割程度。まだまだ知られていない分野だと思います。逆に言えば、走りの技術を身につけるだけで、他の子にはない能力を伸ばすことができ、あらゆる競技で結果も出やすくなるはずです。
速く走るための一番の方法は、やはり専門家や技術を持った指導者に習うことだと思います。現在はプロスポーツ選手(野球やサッカーなど)でも陸上競技の指導者から走り方を習っている時代です。ぜひ今回のお話を参考にして、お子さんの成長につなげてみてください。